社内から集められたプロジェクトメンバー
「宇宙の誕生の謎にいどむ望遠鏡を作りたい」。そんな相談が、国立天文台の研究者から、キヤノンに入ったのは1984年のことでした。カメラレンズの技術力を見込んでの相談でした。この「すばる望遠鏡」や「人工衛星用望遠鏡」を作るプロジェクトのために、キヤノンの社内から光学、機械、電気、材料など、さまざまな分野の15人のメンバーが集められました。松田さんは、光学の設計の担当になりました。
世界最大の直径8.2メートルの凹面鏡で、宇宙からの光をつかまえる!
すばる望遠鏡の最大の特徴は「視野の広さ」です。同じクラスの望遠鏡の5倍くらい広い角度範囲を、一度に、しかもクリアに見られます。だから、遠くの新しい天体を見つけやすいのです。宇宙からやってくる光を、直径8.2メートルの大きなお椀形(わんがた)の鏡(凹面鏡(おうめんきょう))で受け止め、その鏡に反射した光を一点に集めて、デジタルカメラで撮影します。すばるの性能の高さは、様々な方向の天体から来た光をこの大きな鏡でいっぺんに集めて撮影できることなのです。
しかし、この「光を一点に集めること」が、じつはとても大変でした。
「中学校の理科では、“凸(とつ)レンズを使うと光を一点に集めることができる”と習うでしょう? でも実際には、レンズ1枚だけでは、光は一点に集まらず、できた像はボケているんですよ」
15年かけて、世界に誇る高精度な望遠鏡を作り上げた
「すばるでは、ちがう種類のレンズを何枚も組み合わせて、ボケを補正しようとしました。でも従来の設計のしかたでは、国立天文台の注文通りの望遠鏡はとても作れない。そこで私たちの先輩が新しい方式を考え、最終的には、組み合わせたレンズを大きさで70%、重さを50%以上小型化しました。
最初に相談を受けてから15年かかりましたが、すごい発見があることを夢見ていたからこそ、できたのです。私は同時期に別の望遠鏡の設計を担当していたので、すばるの開発に参加したのは組立調整の作業からでしたが、最初に撮(と)った宇宙映像が公開されたときは、本当に感動でした」
それ以来、すばる望遠鏡は、つぎつぎと新しい発見をしています。
観測を始めたすばると、感動の対面
松田さんは、実際の観測がスタートしてから、初めてハワイ島のすばる望遠鏡を訪れたそうです。
「設計者でもある先輩が訪問ツアーを企画してくれて、旅行も兼ねて自費で行きました。すばるの天文台があるのは、ちょっと走っただけで息が切れるような山の上です。そこにこれだけの精密装置を作りあげたんだなあ、と感動しました」
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