どんなところが楽しい?

自然界にあふれる「不規則なもの」に規則性を見出す

複雑に見える模様も、よくみると全体は、小さな部分の反復でできています。このように入れ子構造になっている図形をフラクタルといいます。

自然界にあふれる「不規則なもの」に規則性を見出す

中学校の数学で勉強する図形は、まっすぐな線やなめらかな曲線でできています。しかし、身近な自然界にあるものの形のほとんどは、それほど単純ではありません。樹木の形を考えてみても無数に枝分かれした複雑な形ですし、岩石の表面にも複雑な凹凸(おうとつ)があります。なめらかな形は自然界ではむしろ例外なのです。

高安さんが研究しているのは、これらの複雑な形や現象をあつかう数学や物理です。たとえば、空にわきあがる雲や人間の脳波のような、一見不規則な動きの中に法則性を見出そうとする研究が、1980年代後半、物理や応用数学の分野でさかんに行われるようになりました。それが、高安さんが研究する「フラクタル」と呼ばれる分野のはじまりです。高安さんは大学1年生の時、この研究に出合いました。やがて、コンピュータが飛躍的(ひやくてき)に進歩し、いろいろなデータ、特に人間の行動に関するデータが大量に集められ、高度な分析やシミュレーションが可能になりました。そして、このフラクタルでつちかわれた研究を応用することで、それまで数式でとらえることができなかった人間の集団行動に潜む法則が姿を現してきたのです。

株価の動きを予測して、暴騰(ぼうとう)や暴落(ぼうらく)を防ぐことが可能になる!

大学院生の部屋で。外国為替市場の変動データを見て、分析の方法を話し合います。

株価の動きを予測して、暴騰(ぼうとう)や暴落(ぼうらく)を防ぐことが可能になる!

新聞やテレビで株価の変動のグラフを見たことがあると思いますが、その変動はきわめて複雑なジグザグした線で表されます。一見、何の規則性もないような複雑な変動ですが、ある数式を使って処理をすると、どの株価にも共通するような法則性が見つけられるのです。変動の激しさを数値で表すことで、株の売買をしている人達の集団心理までも推測できるわけです。高安さんは、為替(かわせ)市場の変動データの分析をもとに、研究でわかってきた数式を応用し、「PUCK(パック)ツール(※)」という分析ソフトを作りました。このソフトを使うと、市場の特徴をリアルタイムで評価することができます。これによって、株価が暴落する前ぶれを見つけることができるようになり、暴落を防ぐような対策を打てるようになるかもしれない、と高安さんは夢を描いています。

「約250年前、ヨーロッパでは株価が大暴落しました。その時、ニュートンは大損をして、『私は、天体の動きは予測できるが、人間の狂気(きょうき)は予測できない』、と言ったそうです。現代の物理学は、『フラクタル』の考え方と、コンピュータという道具を手に入れたことで、彼が当時では解明することができなかった『人間の狂気』にも、科学的にいどむことができるようになりました。誰もが不可能と思っていたことを可能にするのが、科学のすごいところなのです」

※シェークスピアの『真夏の夜の夢』に登場するいたずら好きな妖精(ようせい)の名前になぞらえた。

わからないと思われていることを解明するうれしさ

わからないと思われていることを解明するうれしさ

高安さんに、研究者としてのやりがいを聞いてみました。
「わかっている現象ばかり見ていても、たいくつです。わからないことに出会い、どうなっているんだろうと悩み苦しみます。ぼう大なデータと格闘している中で、かくされていた規則性が見えてきたときには、本当にうれしいです。自分の発見を説明する理論を作り、社会に応用されることをめざして研究を進めます。これはとてもやりがいのある仕事です」

フラクタルの図形を作ってみよう!

フラクタルの図形を作ってみよう!

フラクタルの図形は、簡単に作ることができます。下敷きやガラスなどの上に歯磨き粉やクレンザーなどをたらし、上からもう1枚のガラスや下敷きをかぶせて、ゆっくりはがしてみましょう。できたもようが、フラクタルの図形になっています。

応援メッセージ

中学生の“勉強”は、勉強することもきちっと決まっていて、教科書や参考書が用意されていて、たとえて言えば、安全で舗装された近道を走っている感じです。問題が与えられ、解き方も決まっており、正解も用意されています。しかし、大学での“研究”は、前人未到の道なき道をどっちに行こうか、考えながら自分で道を切り開くようなもの。だから、研究では、まず、人が解いたことのない問題を自分で発見しなくてはなりません。さらに、その問題は、答えも知られていないので、その解き方から自分で考えださなくてはなりません。つまり、宝の価値を自分で見極めて、地図も道もないところを探検することができる人の方が研究に向いています。与えられた問題でいい成績を取れる人が必ずしもいい研究者になれるというわけではありません。好奇心をはぐくむことが大切です。
中学生の頃は、何かに夢中になれる自分を発見することが、次につながると思います。自分で可能性をせばめないで、なりたいと思うものを突きつめれば、プロフェッショナルになれると信じてください。これは、かつて、学生だった私が父からもらった最高の応援の言葉です。

しごと傾向グラフを作ろう!

サイトを見て回って、気になった仕事をチェックしてみよう。自分の傾向をグラフ化して見ることができるよ!

あなたのお仕事の傾向

現在のグラフをクリアする

  • 今すぐ役に立つ
  • 新しい価値を生む
  • 1人でがんばる
  • チームでがんばる
  • じっくり取り組む
  • 人とかかわる
  • モノを相手にする
  • 事務所で働く
  • 研究室・工場で働く
  • 会社の外でも働く

しごと傾向グラフを印刷する

本サイトは経済産業省の委託により、「キャリア教育と理系の魅力」の情報発信のために、学校法人河合塾が作成しました。
Copyright©2009 Ministry of Economy, Trade and Industry.All Rights Reserved.
河合塾