どんな仕事?

研究テーマはさまざまなところから

広告代理店の東京の会議室と、大阪の会社を結んでテレビ会議をしています。先生の右とテレビの中が、広告代理店の方です。

研究テーマはさまざまなところから

高安さんの研究室には、さまざまな企業や研究機関から、経済活動や人間の行動が記録されたデータを分析してほしいという依頼が寄せられます。たとえば、大手の銀行からは「ドルと円の為替レートが、どう変化してきたか」、広告会社からは「いろいろなブログに、いつ・誰によって・どんな言葉が書かれたか」、大手コンビニからは「全国のどこの店で・いつ・どんな値段の・どんなものが売れたか」などです。大学の研究室には、このように企業や研究機関から研究テーマが持ち込まれ、さまざまな「共同研究」が行われることがよくあるのです。

企業との共同研究は、学問にとっても効果あり

東京大学経済学部の吉川洋先生の研究グループと議論をしているところ。日本中のスーパーの販売データを分析し、経済現象解明の共同研究をしています。

企業との共同研究は、学問にとっても効果あり

「たとえばブログの研究では、日本のおもなブログのサイトに書き込まれる4,000万件近い書き込みのなかで、『KY(空気が読めない)』『マイケル・ジャクソン』『冬休み』など、流行や事件、季節に関する特徴的な言葉が、どんなタイミングで流行し、どのように使われなくなったかを分析しました。これによって、ことばの流行の仕方には、きれいな法則があることがわかりました。たとえば、『クリスマス』という言葉を含んだ文章は、クリスマスが近づいてくるにしたがって、急に書き込みが増えてきます。この書き込みの数の増え方が、簡単な数式であらわされる関数にしたがっていることがわかりました。おおざっぱにいうと、『クリスマスまでの残りの日数分の1』の関数で口コミが増えています」

「このような人間の活動にみられる法則は、コンピュータ技術の進歩によって、たくさん発見されています。これらの法則を合理的に説明する人間の行動モデルができれば、それは様々なブームの予測に使えることになります。一方、この研究を依頼してきた広告会社にとっては、広告の出し方・効果的なタイミングの有効なヒントになります。いずれは、これもマーケティングの新しい学問分野になっていくでしょう。このように、共同研究は、大学・企業の両方にメリットがあるのです」

学生の教育も大切な仕事

研究室は、学生が自由に議論できるスペースになっています。学生と先生が、定期的に研究内容の報告をし合います。

学生の教育も大切な仕事

このような研究は、高安さんの研究室の学生もいっしょに行います。大学の教員である高安さんは、研究者であるとともに、学生の教育・指導もしています。

「私が指導している大学院の学生は10人ほどですが、いっしょに論文を読んだり、1〜2週間に1回ずつ、パワーポイント数枚で、自分が研究していることを発表させたりしています。研究者として大事なのは、良い発想を育み、論理的に解析し、質の高い論文を書くことですから、研究の議論や論文の指導には時間をかけます。学生はまだ経験が浅いので、壁(かべ)にぶつかることもあります。ぶつかったら、乗り越え方をいっしょに考えながら、研究を続けていきます。最先端の研究は、学部で学生たちが勉強した物理や数学の問題のように答えが用意されていません。まだ、だれも答えを出したことがない問題を学生が自分で見つけるところから始まります。そして、学生の考えたことを生かしながら、問題解決に足りないところをうめるヒントを出し、成果がでてきたら、論文に書くように指導します。研究着手から論文にするまでには、学生やテーマによる個人差もありますが、学会とのやり取りも含めて2〜3年くらいかかります。しかし、この時期に学生は研究者としてすごく成長します」

研究室を巣立つ学生の活躍が楽しみ

共同研究は大学院生と一緒に行います。論文を書く学生を指導しています。

研究室を巣立つ学生の活躍が楽しみ

「共同研究のテーマだけでなく、学生が自分で持ってきたテーマを研究することもありますよ。たとえば、ある大学院生は、『ドラゴンボール』の主人公の、シリーズ毎のパワーアップの度合いを、数字に置き換えて分析しました。そうしたら、ほぼ2.5倍ずつのペースで強くなるという、きれいな規則性があったんです。主人公が成長するにつれて、敵もどんどん強くなる。ベストセラー作品は、読者の心地よい期待感が満足できるようになっているんだ、ということがわかりました。学生が、研究者として巣立って行ってくれるのはうれしいです。とくに就職した人が、その会社の中で、この研究室で学んだことをどんな方向で生かしてくれるのか、とても楽しみです」

1日のタイムスケジュール

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お仕事豆知識

大学の教員になるには

高校までの教員になるには「教員免許」が必要です。教員免許は、大学や短期大学などで、教科と教職の科目を勉強して教育実習を行い、単位を取得することで与えられます。そして採用試験に合格すれば、教員として働くことができます。

これに対して、大学の教員になるには、意外なことに「免許」は必要ありません。ですから、企業などに長年勤めた人がその実績を買われて大学教員になったりもしています。しかし、やはり大学教員になるために一番重視されるのは、その学問分野での研究実績です。それをいちばんわかりやすく証明するのが博士号(Doctor)の取得であり、博士号を取るためには、研究成果を著した論文をたくさん出して、それが独自性のある優れたものであることが認められなければなりません。大学院の博士課程は、研究成果を出し、それをまとめた論文を書き上げるためのコースですから、大学の教員(研究者)になりたかったら、博士課程に進学するのが近道です。

教員を採用する各大学は、このような社会的に認められた研究成果・論文の審査に加えて、その人が学生に対してどのような教育ができるのかを見きわめ、採用を決めています。

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