有名なことわざに“少年老い易(やす)く学成り難(がた)し、一寸の光陰軽んずべからず”がある。これは私が中学生の時に習った言葉である。このことわざの重みは、若い時はほとんど感じなかったし、ふだんは忘れていた。しかし、定年退職したいま人生を振り返ってみるとき、この言葉の重みをしみじみと感じる。ある目的に向かって人生を走り続けるとき、“学成り難し”をつくづく感じるものである。また、目的も周りの状況に合わせて時代と共に変化して行く。
もうひとつの名言に“少年よ、大志を抱け”がある。これは若い時期にしっかりした目的を持てと解釈できる。目的が決まると、それに到達するべき最短の経路が決まる。時間を節約して寄り道せず、目的に向かってひたすら進むことができる。この意味で、私の人生は紆余曲折(うよきょくせつ)の多いものであった。そして、あるきっかけが私の人生の方向を決定した。そのきっかけは当然人それぞれ異なる。この大災難がそれになるかも知れない。
災難は多くのことをわれわれに教えてくれる。災難から学ぶことは実に多い。人生の目標は意外なところにある。大切なことは人生の目標を絶えず持ち続け努力することだ。この持続が大きな成功につながる。毎日の小さな謎(なぞ)解きはゲームであり楽しみである。その一生涯の積み重ねが、長い目でみると大きな自信となって人を成長させる。そして、周りの人々が自分を応援していてくれることを実感するものである。好転が好転を呼び、周りの人々が自分の進む道に共感し参加してくれるものである。人一人でできる仕事の大きさは限られている。それぞれの道にすぐれた人々と共に生きることは、楽しいことであり大きな仕事をする原動力になる。大切なのは、“どんな職業でもよいから、一生涯続けてできる仕事をなるべく若い時に早く発見すること”である。