昆虫の脱皮・変態からバイオミネラリゼーションへ

長澤 寛道   東京大学 農学部 生命化学・工学専修
生物有機化学 /研究領域:有機物と無機物の相互作用、硬組織形成、温室効果ガス ]

科学の原点は「不思議」です。私の現在の研究は20年前に始めたものです。私は、それまで昆虫の脱皮・変態のメカニズムを研究していました。あるきっかけからエビやカニを含む甲殻(こうかく)類を研究対象にするようになりました。甲殻類は昆虫と同じ節足動物ですので、脱皮して成長します。両者の大きな違いの一つが甲殻類は硬い殻をもつということです。「硬い」の原因は炭酸カルシウムです。というわけで、私の研究は炭酸カルシウムを含む殻をどのようにして作るのだろうかという「不思議」から出発しました。このように生物が無機鉱物を形成する作用をバイオミネラリゼーションといいます。

そのうちに、私の興味は他の生物のバイオミネラリゼーションにも広がっていきました。実際、魚類の耳石(耳の中にできる石で平衡(へいこう)感覚に関与)、円石藻のココリス(海洋に棲息する単細胞藻類で炭酸カルシウムの殻(ココリス)を作る)、貝殻、魚類の鱗(うろこ)、サンゴの骨格などに研究対象を広げてきました。広げていく間に、それぞれの生物での共通点や相違点が少しずつ明らかになってきました。これらの研究は「不思議」がきっかけになっていますが、甲殻類や魚介類は水産食資源に、アコヤガイは真珠養殖産業に、円石藻やサンゴは環境保全に、魚類の耳石や鱗は魚の日齢や年齢を推測する道具に、それぞれ深くかかわっており、応用面とも密接に関わっています。また、将来的には人の骨や歯ができる仕組みの解明や病気の治療に応用できるのではないかと思っています。

「不思議」には2種類あるように思われます。一つは、一般の人がごく自然に思う「不思議」で、もう一つは科学の研究している人が研究の中で発見する「不思議」です。科学研究は、「不思議」の連続によって自然に導かれるものかもしれません。「不思議」を解決していく過程こそが研究です。そこでは、「不思議」を解明していく力が求められます。しっかりした基礎知識と専門的知識の上に、常に「不思議」を発見しようとする気構えが必要です。若い皆さんが将来一人でも多く「不思議」に挑戦してほしいと思っています。

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ながさわ・ひろみち/1948年福岡県生まれ。
主に海洋生物による石灰化の分子メカニズム研究をしている。石灰化は二酸化炭素の生物による固定反応ですが、この反応に有機物が必須(ひっす)であり、有機物と無機物の相互作用解析から制御(せいぎょ)機構を解析している。

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