素朴な疑問を大切に~心理・行動の謎を解く

諏訪 康雄   法政大学 大学院政策創造研究科 雇用政策プログラム
雇用政策 /研究領域:労働法 ]

疑問つまり好奇心は科学の発展を支える原動力です。
東日本大震災のような自然の脅威(きょうい)に直面し、なぜ予測できなかったのかという疑問を、誰もが抱いたことでしょう。地震も津波も原子力発電所事故も、人びとの素朴な疑問を生むだけでなく、専門家の思いにも強く働きかけます。こうして新たな研究の領域や方法や原因解明や対策が生まれます。

自然科学だけではありません。人間社会を対象とする社会科学も、違った角度からの疑問を投げかけます。たとえば、津波に襲われ、防潮堤などで防ぎきれず、家屋などが流されてしまった地域でも、ほとんど死者や行方不明者を出さなかったところがあるのは、なぜでしょうか。地域のまとまりの違いや津波訓練の徹底度などが差を生んだと指摘されていますが、こうした人間行動というソフト面での対策を広めるにはどうしたら良いのでしょうか。

社会科学も、事実を丹念(たんねん)に収集し、体系的に検証し、合理的な根拠に基づき、因果関係を説明していきます。ああでないか、こうでないかと仮説を作り、より合理的で体系的で精緻(せいち)な説明方法(理論仮説)を探していこうとします。社会科学では、自然科学と違い実験が難しく、さまざまな要素が影響し、しかも人間の心理や行動が複雑にからみ合いますので、厳格な検証が困難です。数学的な水準の論証はもちろんのこと、物理学的な水準の証明も無理なことが大部分です。つまり理論仮説にとどまっていて、明確に実証されていないことが少なくありません。

だからといって、社会科学が無意味で無駄な研究だとはいえないでしょう。人間社会をめぐる迷信や思い込みや不正確な情報を改め、より合理的に説明をつける努力と対応策の上にこそ、さまざまな組織や人間行動が複雑に関連しながら展開していく現代社会は機能するのです。

私もどうして人びとは働くのかという素朴な疑問から、だんだんに雇用政策という専門領域へ接近していきました。現在、調査研究を踏まえ、より良い雇用政策が開発できないかと模索しています。大震災後の雇用の維持確保や創造、さらには雇用社会と人びとの元気に少しでも貢献できればと願いながら。

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すわ・やすお/1947年東京都生まれ。
職業上のキャリアを創っていく人びとの活動を支援する諸政策の研究。キャリアをめぐる意識や実態を調査し、キャリア形成を促進する政策的な枠組みや仕組みを考え、それを法的に担保する基盤を整えようとする調査研究をしています(なお、中高生の時には、将来このような分野の研究者になるとは、夢にも思っていませんでした)。

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