暗号研究(理系)を生かし歴史(文系)も楽しむ

辻井 重男   中央大学 研究開発機構
情報セキュリティ、暗号理論 /研究領域:数学的暗号理論、情報セキュリティ総合科学、情報社会における教養のあり方と人材育成 ]

暗号というと、戦争や外交を連想しますか。それとも、「インターネットやICカードなどで日常的に使われているではないか」と思いますか。
暗号は、第2次大戦などでは、ナチスドイツに対するイギリス・アメリカ連合軍の勝利に決定的な影響を与えましたし、今でも、軍事・外交に使われているでしょうが、それは別として、現在では、情報社会を支える基盤技術になっています。

私がなぜ、暗号研究を始めたかについてお話しましょう。私は、小学校の頃から歴史の本を読みあさっていましたが、物理、化学、生物などは余り得意ではありませんでした。しかし、数学の美しさには魅せられていました。
大学進学に際して、進路を決めるときは、歴史をやろうか、数学を使う分野にしようか大いに迷いました。そして、「歴史は趣味でもやれるが、数学系の学問はそうはいかないから」と不遜(ふそん)なことを考えて、東京工業大学に入学し、電気工学課程に進みました。
どの学問も趣味でやれるほど甘くはありませんが、私の場合、数学的な暗号理論を専門にしていると同時に、歴史を変えた暗号という観点から、世界の流れを考えることも楽しみの一つとなっています。

東工大の教養課程には、文学や哲学などで著名な先生が講義をしておられましたが、それぞれ2単位では物足りなく感じ、文系の学問をどれか一つ副専攻として学べると良いと強く思いました。それ以来、私は、副専攻論者になり現在まで、持論を展開しております。
米国などでは、ダブル・メジャーと言って2つの専門を持っている人も少なくないようですが、日本は高校時代に、自分は理系だ、いや文系だと早くから決め過ぎるように思います。情報化が進み、社会はますます複雑になり、技術、法律、そして人間の倫理や心理などの知識と知恵を総合して、難しい問題に取り組む時代になりました。

人生は長いのです。学校時代だけが勉強する時期ではありません。皆さんは、得意な分野を深く勉強すると同時に、視野と興味を広く持って将来を切り拓(ひら)いて欲しいと思います。

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つじい・しげお/1933年京都府生まれ。
30年位前から、暗号理論を中心に、情報倫理などの文系的な学問も含む情報セキュリティの研究を続けています。
暗号の歴史は、人類の歴史と重なりますが、1970年代に発明された公開鍵暗号は、火薬の発明にも匹敵するといわれている画期的な暗号です。その数学的魅力と、情報社会での必要性から暗号研究を始めました。趣味は歴史。
著書「暗号と情報社会」(文春新書1999年)など。

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