震災で韓国との近さを実感~朝鮮半島の国際地域研究

木宮 正史   東京大学 教養学部 地域文化研究学科
国際政治学、比較政治学 /研究領域:朝鮮半島地域研究、東アジア国際関係 ]

2011年3月11日、私は韓国ソウルの国会図書館にいた。研究対象である、韓国外交の研究に必要な文献や資料を調査するためであった。その時、妻から携帯メールで地震のことを知らされた。その後、ホテルに帰り韓国のニュースを見て驚愕した。そして、パソコンのメールを開いたとたん、韓国の友人たちから安否を尋ねるメールが舞い込んでいることを知った。本当に温かい配慮に満ちた内容であった。その後、韓国では「ヨン様」を始め韓流スターたちの義援金寄付が相次いだし、一般の人たちもそれに積極的に参加した。

日韓の間には、その後も、竹島・独島の領有権の教科書記述問題をめぐり摩擦はあったし、福島原発をめぐる日本政府への対応に対する不信が高いことも事実だ。にもかかわらず、30年くらい日韓関係を研究している身としては、日本と韓国との距離がこれほどまでに近づいてきたということを実感したこともなかった。日本の出来事は韓国にとっては、いろいろな意味でもはや「他人事」ではなくなったのだ。

日本と朝鮮半島との間には植民地支配という過去の「苦い経験」がある。その後も、そうした過去の歴史をどのように見るのかをめぐって対立が継続する。にもかかわらず、中国が大国として浮上する中、また、朝鮮半島核危機による緊張が続く中、東アジアの未来をどのように切り拓(ひら)くのかをめぐって、日本と韓国との間には、共通利益に基づく協力の必要性も高まっている。そうした中、朝鮮半島の歴史的展開と現状を、そこに暮らす人たちの視点から「内在的に」理解することはぜひとも必要な知的作業である。

それは、歴史学、政治学、経済学、国際関係論など、広範な知的道具立てを総動員することによって初めて可能になる。その意味で、朝鮮半島の国際地域研究は、理論と現実の交錯(こうさく)する挑戦的な知的営みであるとともに、日本・東アジアの未来を切り拓く実践的課題でもある。

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きみや・ただし/1960年静岡県生まれ。
東アジアの「周辺」、冷戦構造の「前哨」に置かれた朝鮮半島の視座から、戦後の東アジア国際政治経済の歴史的展開を、実証的に再解釈することを目指しています。そして、朝鮮半島と日本との関係に関する新たな展望を切り拓きたいと考えています。

被災された生徒・先生方へ

今回の震災に関しては、国境を越えて多くの人が人間としての感性を揺さぶられました。孤立・不安があるとは思いますが、日本を始め国際社会が、皆さんの「痛み」に共感し復興を支援する意思と能力を持っています。

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