サイエンスは個性とプライド~医師から転身

半田 宏   東京工業大学 生命理工学部 生命科学科、生命工学科
遺伝子発現制御、ナノビーズテクノロジー /研究領域:ケミカルバイオロジー、機能性ナノカプセル、mRNA合成速度の調節機構 ]

私は医学部を卒業し、医師免許を取得後いったんは臨床医を志(こころざ)しましたが、ボストンにあるマサチュセッツ工科大学(MIT)がん研究センタ-(現コッホ研究所)のPhillip A. Sharp博士と出会ったのがきっかけで、サイエンスが楽しくなり、しかもテクノロジ-と統合した独自の研究境地を開拓しています。ちなみに、Sharp博士は「分断遺伝子の発見」で1993年にノ-ベル医学生理学賞を受賞しています。

1978年から延べ3年間にわたりSharp博士に師事しましたが、その初期に大きなカルチャ-ショックを受け、精神的にどん底に落ち込みました。しかし、ふとしたことから立ち直ることができたので、その経験談をお話します。

我々日本人は学習能力や適応能力を大いに鍛(きた)え、正解がある答案用紙に満点をとるのが優秀だと教育されています。そのような教育に慣れ親しむと、個性を喪失(そうしつ)し、独自性が何たるかがわからなくなります。ところが、世界トップのMITやハーバード大学における学問は、独自性が必要不可欠です。既存の法則や概念をただ学習し、理解するだけではだめです。他人と異なる独自の考えが無ければ、研究者として全く通用しません。このカルチャ-ギャップにより、それまでの私の学問に対する考えは完全に打ち砕かれ、何度も劣等感に打ちひしがれました。

そのような苦境下で、ふと気付いたのが自分の素朴な考えを大切にし、自分独自に考えるということでした。おもしろいことにそれを契機にして、自分なりの研究の組み立てや、結果の考察が楽になり、優れた学問とはいかなるものかが徐々にわかるようになりました。そして、自分の個性的な考えを日毎にレベルアップし、万人が認めるまでに高めることができれば、それは立派なサイエンスであることと、自分と他人の考えを明確に区別し、決して追従しない誇りがサイエンスには大切であることを悟りました。

「サイエンスは個性とプライド」を教育研究のモットーとし、自由な発想で、独自のサイエンスを楽しみ、サイエンスとテクノロジーにおける我が国なりの文明・文化の構築を目指しています。

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はんだ・ひろし/1946年大分県生まれ。
東京工業大学ソリュ-ション研究機構教授。サイエンスとテクノロジーを統合し、高機能性ナノビーズの開発から、創薬や次世代医療技術開発を目指して、薬剤を含む小さな生理活性物質を用いて生命の謎の解明に挑戦しています。

被災された生徒・先生方へ

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