自分たちの力を信じよう~化学者の立場から
石原 一彰 | 名古屋大学 工学部 化学・生物工学科 |
人間は太古の昔から幾多の苦難を乗り越えることによって、文明を築き上げてきました。科学技術の発展はその象徴と言えるでしょう。しかし、このたびの未曾有(みぞう)の大震災に、我々の安全対策はあまりに無力でした。我が国をはじめ多くの国々が地球温暖化の原因とされる二酸化炭素排出量削減のため、原子力発電こそがクリーンエネルギーであると信じてきましたが、その安全神話も脆(もろ)くも崩れ去りました。
絶望と悲しみのなかで、生き残った我々はどうしたらいいのでしょうか。これまで原子力発電の恩恵を受けておきながら、無責任に原発は危険だから即廃止と決めつけることはできません。人間の叡智(えいち)を結集し、科学技術の更なる発展によって前向きに克服(こくふく)していくしかありません。
かつて、日本は狭い島国ゆえ、高度成長期に特に公害問題で苦しみましたが、経済成長を減速させることなく科学技術の力で克服してきました。命ある限り、我々は歯を食いしばって、この苦難に立ち向かっていかなくてはなりません。そうすることが生き残った我々の使命であると同時に、亡くなった方への祈りであるはずです。日本全国、世界各国から被災地へ支援活動の輪が広がりを見せています。直接、支援に携わることができなくても、間接的でも構いません。自分にできる、あるいは自分にしかできない支援というものがあるはずです。
誰しも願いはひとつ。私は有機合成化学・触媒化学を専門とする化学者です。特にグリーンケミストリーを指向する機能触媒(しょくばい)の研究に力を入れています。文明社会の持続的発展には、医・農薬品、機能性材料などのファインケミカルを、できるだけ環境に負荷をかけず、できるだけ効率的に製造する触媒技術の開発が必要不可欠です。微力ではありますが、少しでも社会に貢献出来ればと思って、学生諸君と一緒に日々研究しています。これは私に与えられた責務だと信じています。「科学技術立国、日本」の旗印を掲げて、皆さんと一緒に我が国の一日も早い復興を願って頑張ります。
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