人間は実は学問好きな動物~危機を乗り越えるために

田中 実   日本獣医生命科学大学 応用生命科学部 動物科学科
行動の分子生物学 /研究領域:子育て、ホルモン、遺伝子 ]

学問というのは、その名のとおり学び問うということです。学ぶということは知識を受け継ぐということで、生まれた時から誰もが自然に行っていることです。私は大学で脳についての研究をしていますが、脳というのは知識を受け継ぐだけでは満足せず、得られた知識をもとにして、まだわからないことに問いかけをし、さらに新しい知識を求めます。そして新しい知識を得ることに対して大きな喜びを感じます。ですから、学問をするということは嫌(いや)なことを仕方なくすることではなく、新しい知識を得るために誰もが願う自然な欲求なのです。

それでは、なぜ私たちは新しい知識を得たいと思うのでしょうか。それは、知識を得ることが生きていくために必要だからです。

自然界には、生物の生存にとって危険なものがたくさん存在します。動物には生存にとって必要なものと危険なものを感知する能力(感覚)が備わっています。そして必要なものは「好き」と感じて手に入れようとし、逆に危険なものは「嫌(きら)い」と感じて逃れようとします。これが動物の行動を決める基本になっています。

しかし、人間は「好き」か「嫌い」だけで行動を決めるわけではありません。人間には得られた知識に基づいて状況を分析し対処するという高度な脳の機能が備わっています。その能力のために現在の携帯電話やバイオ技術に代表されるような科学技術を発達させることができ、生活に多大な恩恵をもたらしています。しかし、今回の大地震と津波、それに伴う原子力発電所の事故に遭遇(そうぐう)した時、現在の人間の知識というものがいかにまだ不完全なものであるかを痛感させられます。

私の専門である脳科学の分野においても学習や行動の仕組みなどについて新しい知識が次々と得られてきていますが、脳の機能を理解するにはまだまだ不十分です。ですから今のこうした時にこそ若いみなさんにいっそう学問に取り組んでほしいと思います。人間は学問が好きな動物ですから。

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たなか・みのる/1950年三重県生まれ。
大学1年生の最初の生物の授業で初めて遺伝子(DNA)の構造と働きを知り、生命の仕組みの見事さに魅せられました。大学院卒業後、大学に職を得て、遺伝子の構造と働きについての研究を続け、現在では、動物は何故子供を可愛がり、守り、育てるのか、遺伝子が脳に命令する仕組みを明らかにする研究に取り組んでいます。

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