人に喜んでもらえる仕事を探して、文学から土木工学へ

宮川 豊章   京都大学 工学部 地球工学科
土木工学 /研究領域:土木材料、コンクリート構造、インフラマネジメント ]

中学・高校生の頃私は文学少年で、古典から新作まで大いに読んだものです。その結果、自分が喜んで働けるだけではなく、他の人にも喜んでもらえるような仕事をしたい、と思うようになりました。自分にとって面白いという観点から、わたしは物理が好きで、中でも力学が好きだったので、土木の道を選びました。

コンクリート構造物に代表される土木構造物は、いろんな災害にあっても社会基盤として市民社会を支えることが使命です。阪神淡路大震災に遭遇(そうぐう)したときに、その信念はさらに高まりました。東日本大震災においても、地震や津波に負けずに毅然(きぜん)として立っていたコンクリート構造物もありました。このような構造物を造りこなし使いこなすことが必要です。その結果、他の人、つまり市民の方々に喜んでいただけるのです。

コンクリート構造物だけではなく、ものは造った時が最も性能が良く、時とともにその性能は低下します。必ず劣化してゆくのです。劣化した構造物に巨大地震が襲来すると、劣化していない場合と比べて被害がはるかに大きなものとなります。劣化程度をきちんと把握、診断した上で、補修・補強などの対策をとってゆくことが必要です。造ればそれで良いというものではありません。

造り使いこなすためには、耐震性など力学的な分野ばかりではなく、コンクリート中の鉄筋が腐食する塩害や、コンクリートが膨張(ぼうちょう)しひび割れる反応などについても、種々の実験と解析が必要です。実験と解析という両輪があって初めて、説得力のある結果となります。両輪の結果が一致することは期待通りで面白く、一致しない場合にはその理由を知る意欲をかき立てられてますます面白く感じます。日々新しい発見と確認に満ちあふれているのです。

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みやがわ・とよあき/1950年滋賀県生まれ。
面白くて社会に役立つことをしたくて、丈夫で美しく長持ちするコンクリート構造物の研究をしています。学生時代は学園紛争の時代で、勉強があまりできず、学問にも(?)励みたい、と思ったものでした。「コンクリートのはなし Ⅰ、Ⅱ」(技法堂出版)を読んでいただけるとコンクリートについて楽しく理解できると思います。

被災された生徒・先生方へ

津波に対する対策も土木分野のテーマです。津波に対しても壊れない波高より大きな堤防を造ることだけが対策ではありません。どのような方法で使いこなすかも含めて土木構造物を考えることが必要です。ぜひ、ともに考えましょう。

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