「専門」とは何だろう~柔軟に絶えず見出して

中川 正   三重大学 人文学部 文化学科・アメリカ研究
文化地理学 /研究領域:アメリカ南部における文化景観に関する研究 ]

高校までは、いろいろな科目をまんべんなく学んでいくのですが、大学に進学すると、各自専門的な学問領域を学ぶこととなります。専門とは何でしょうか。今回、東日本大震災が発生した後の人々の動きを手掛かりとして、考えてみましょう。

震災時には、多くの人が避難所で寝泊りをして、不自由な暮らしを余儀なくされています。その中で、ある人は建物の整備をし、ある人は送られてきた物資を整理し、ある人は調理をするといった役割分化が生まれています。皆がその状況の中で貢献できることを考えて生まれてきた役割が、その人のその場における専門です。

このような専門は、自分が所属するコミュニティの性格によって変わっていきます。たとえば、大学で文学を専門にしていた学生が、卒業後、地元の銀行に就職したとしましょう。銀行営業部門での専門は、新たな顧客獲得という領域であって、その時には大学時代の専門は影を潜(ひそ)めます。それは、銀行というコミュニティの中で、必要とされる領域が異なったからです。すなわち、専門は、自分がどのコミュニティに属し、そのコミュニティが何を必要とするかによって変わってくるものなのです。

大学の専門課程では、学問領域の最先端の領域を学びます。それは、世界というコミュニティの中で、さまざまに機能分化された領域です。しかし、世の中の変化がめまぐるしくなったこの時代では、必要とされる専門は必ずしも固定化されません。学んだ知識はすぐに古くなり、価値観や、思考の枠組みそのものが急速に変化してきました。ちょうど、あなたが震災現場で、大学で、銀行で、役割を変化させるように、グローバルなコミュニティの中でも、構成員は、世の中の動きに合わせて自分ができることを探し、絶えず学びながら専門を見出していく柔軟性が求められるようなったのです。専門をしっかりと学びつつ、社会全体を見渡せる柔軟性をも養ってください。

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なかがわ・ただし/1957年富山県生まれ。
文化の地域的差異、文化と環境とのかかわり、文化の景観への現われを研究対象としています。

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