自然との調和を重んじる日本からこその省エネルギー
澤木 宣彦 | 愛知工業大学 工学部 電気学科 |
今から100年前(20世紀初め)は科学技術の発展にとって大きな転換期でした。1920年頃量子力学に代表される「現代物理学」とよばれる新しい学問(考え方)が創られました。宇宙を形作る物全てが小さな素粒子によって形成されていること、分子や固体の形成に電子が関わっていることが明らかになり、1950年までにトランジスタや超伝導が発明・発見されました。その後、半世紀を経て半導体集積回路技術の進展が現代の情報技術を造り上げました。その結果、20世紀末までには、工場の生産性は向上し、私たちの生活も豊かになりました。
この大きな変革について発展途上国と呼ばれる国々が置き去りにされてきましたが、21世紀に入った今、世界が情報を共有できるグローバル化が進み、国と国との貧富の差が徐々に縮められています。21世紀は世界が一つになる時代です。
ヨーロッパで発祥(はっしょう)した20世紀の科学技術は、人類が利用できる資源に限りがあることを考慮しないで発展してきました。その結果、現代の文明社会は莫大(ばくだい)なエネルギーを消費しています。しかし、地球上の人口はこの100年の間に20億人から60億人にと3倍に増加しました。石油や天然ガスなどの化石燃料は有限で、21世紀の世界の人々の暮らしを支えるには限界があることは明白です。
莫大なエネルギー消費を要する現代の文明社会はこのほんの100年の間に発展したものです。数十万年という長い年月をかけて進化してきた生物が、地球上で環境に適合しながら進化し、極めて高いエネルギー効率の仕組みを造り上げてきたのと大きな違いがあります。今後、全世界の人々が等しく豊かになるためには、エネルギー効率が生物並みあるいはそれ以上の仕組みを造り上げることが必要です。
日本は昔から資源の少ない島国でした。足利義満の造った金閣寺とオーストリアのシェーンブルン宮殿との違いに見られるように、自然と調和することが日本文化の基本でした。小さなエネルギーで大きな豊かさを与える仕組みを提供する学問と技術が21世紀を担(にな)う皆さんの中から生まれてくることを期待しています。
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