傷ついた郷土に寄り添おう!失った目標も取り戻せる

西垣 通   東京大学 大学院情報学環
情報学 /研究領域:メディア論 ]

3.11のあと、しきりに目の前に浮かんでくる光景があります。それは僕が幼いころ、太平洋戦争に負けた日本が必死で立ち直ろうとしていた当時の光景。うす暗い街では傷ついた軍人がアコーディオンで悲しい軍歌を奏で、肥(こえ)だめ臭い田舎ではやせた子どもたちが黙って働いています。冬はこごえ、夏は汗びっしょり、美味しいデザートなんてありません。それら半世紀あまり昔の光景の一つ一つが、震災のむごたらしいガレキのひろがりの上に、モノクロームの写真のように二重写しになるのです。

経済大国どころか、当時の日本はとても貧しい国でした。もともと国土は狭く、人口は多く、ろくな資源もなし。産業は壊滅し、農村は荒れ果て、あるのは希望と意欲だけ、というありさまでした。

「いったい、どうすればよいのか?」――その解答が、力をあわせて高品質製品を創りあげ、世界に輸出し、得られた富で荒廃した郷土を再建することでした。僕もコンピュータ・エンジニアになろうと決意しました。いつしかGDPも世界で2位とか3位とかになり、目的はひとまず達成されたと言えるでしょう。

けれども、豊かになってから、日本人は目標を失ってしまいました。せっかくのインターネットも携帯電話も、使う目的はせいぜいゲームやオシャベリくらい。お金もうけばかり考えている人間の目は、どこか卑(いや)しくずるそうです。

そして3.11がやって来ました。今、悲しすぎる被災地を前にして、もう一度、「いったい、どうすればよいのか?」という問いかけが僕たちに突きつけられています。

解答なんて、たやすく見つかりっこありません。でも、まずは救いが必要な人たちと気持ちを重ねてみたい。傷ついた郷土をいたわり、再建させるネットワークを創る努力がいま、大切ではないかと思うのです。

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にしがき・とおる/1948年東京都生まれ。
インターネットをはじめとする情報技術(IT)と、人間の生き方や社会のあり方との望ましい関係について、基礎から考えていくのが仕事です。『スローネット』(春秋社)、『ネットとリアルのあいだ』(ちくまプリマー新書)、『ウェブ社会をどう生きるか』(岩波新書)、などの著書がある。

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