見かけが全く違うものの中に共通点を見つけ出す
飯島 淳一 | 東京工業大学 工学部 経営システム工学科 |
学部時代に読んだ『数理科学』という雑誌の特集号に、熱力学という物理学の一分野で発展した、乱雑さや無秩序さを表す「熱力学的エントロピー」と、通信理論で提案された情報量に関する「情報論的エントロピー」には共通点がある、ということが書かれていました。「見かけが全然違うものの背後に、実は共通した構造がある」ということが面白く、著者の戸田正直先生にお話をうかがいに、北大まで行ったことを覚えています。
なぜ、見かけの違うものから共通点を見つけることが、面白いのかって?みなさんは、あのねずっちの得意な「なぞかけ」は知っていますね?日本では、1862年ごろに出された『黒繻子(くろじゅす)の帯』という文献にも、「桜餅」とかけて,「厩(うまや)が空(から)だ」ととく,その心は「うまいね(馬去ね)」なんていう「なぞかけ」が出ています。なぞかけも、見かけの違うものから共通点を見つける遊びで、日本人は昔から得意だったようです。
見かけの違うものから共通点を見つけるには、「ものごとをある観点から抽象化」して表現することが必要です。私の専門であるシステム理論は、抽象化により、現象の奥に潜(ひそ)む構造を明らかにする学問です。システム理論における重要な概念のひとつに、「負のフィードバック」と呼ばれるものがありますが、これは、エアコンの温度制御(せいぎょ)や、暑くなったら汗が出て体を冷やすしくみに共通して見られる、目標値と現状との差を少なくするメカニズムのことを指しています。
現在、企業活動をシステム論的にとらえ、そこから本質的な活動を抜き出し、その活動を支援するための情報システムを、きちんとした理論に裏付けられて設計する方法について研究しています。
今回のような大規模な災害における人間活動のあり方について考えるとき、抽象化能力は、「木を見て森を見ない」ことを避けるためにも、また、見かけの複雑さに惑わされないで、本質を見通すためにも役立つものと考えています。
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