Learn to Live and Live to Learn~人間の尊厳性実現

郡嶌 孝   同志社大学 経済学部 経済学科
環境経済学 /研究領域:経済政策 ]

「Learn to Live and Live to Learn(生きるために学び、学ぶために生きよ)」。これは、同志社大学、京田辺キャンパスの「ラーネッド記念図書館」に掲げられているD.W.ラーネッド博士の言葉である。ラーネッドは、同志社大学の校祖 新島襄を助けて、明治の日本青年の教育に情熱を傾け、その教育態度は「右手に聖書、左手に経済学」と言われる人物であった。

学ぶとは、知識をより多く、深くすることによって自己決定能力を高めることである。これによってより多くの自由を得ることができる。生きるとはBeing (存在すること)ではなくWell Being(より良く存在すること)であろうとする人間の尊厳(そんげん)性の実現への努力である。より人間らしく自由に生きること、これが学ぶことであり、真理に基づきより深く人間性を見極めること、これが生きることの意味である。かくして、学問は精神的な豊かさと心の安らぎを与えることができる。

環境経済学は環境問題の経済学的分析をする学問だといわれる。我が国で一般的・通説的に教えられている新古典派経済学の応用としての環境経済学が環境コストを市場価格にどう反映して効率的な資源配分をするか、という資源配分問題(経済プロセスの効率化)としてとらえるのに対して、経済を基本的には生きるための物資の調達手段とし、生きることを超えてさらに人間らしく生きるための社会のあり方を経済問題(経済プロセスの人間化)とする制度学派にとって、制度学派の環境経済学はそのようなより良き社会構築のための人間と自然の関係(共生)や人間と人間の「絆(きずな)」を考える学問である。そのために既存の社会のあり方(制度)をさらなる人間の尊厳性を実現させるためにどう進化(制度の進化)させるかを問う学問でもある。制度学派が進化論的経済学と名乗る所以(ゆえん)でもある。この意味で、学ぶとは「希望」を見出すことでもある。

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ぐんじま・たかし/1947年福岡県生まれ。
制度学派の立場からの環境問題・環境政策の研究。「未来は予測するものではなく、選択するもの」であるという立場にたって、現在を「転換期」と認識し、環境問題の解決に資する社会イノベーションの必要性とそのための政策を研究しています。今回の震災は日本社会の弱さと強さを示しました。あらためて、社会イノベーションの研究の必要性を痛感しています。

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