被災現場で大転換の必要を痛感。工学分野の災害研究

鵜飼 恵三   群馬大学 工学部 社会環境デザイン工学科
地盤環境工学 /研究領域:地盤防災工学 ]

大震災調査のために、三陸沿岸の津波災害地域へ何度か足を運んだ。その被害は言葉に表せないほど悲惨なものであり、地上にあったすべてのものが津波で破壊されていた。被災者の多くが、未来への見通しを失い、途方にくれている。被災をしていない私達の役割は、被災者が立ち直るまで支援を継続し続けることであると痛感した。

今回の地震の規模は千年に一度と言われているが、地震、火山噴火、豪雨など自然災害の多い日本では、千年に一度の大災害の可能性があらゆる場所に存在している。このように稀(まれ)な大災害に対して、我々はどのように立ち向かえば良いのか、これまで誰も考えてこなかった。工学分野における災害研究の原点は、人の命と暮らしを守ることにある。しかしながら、現実問題として、資源やお金には限りがある。では、この限られた資源やお金をどのように配分したら人の命と暮らしを最大限に守ることができるのだろう。

例えば、費用は度外視しても、千年に一度の地震にも壊れない建物や千年に一度の津波も乗り越えられない高い防潮堤を造るのか。あるいは千年に一度なら建物被害はやむを得ないと受け入れ、人命だけは助かる避難方法を考えるのか。さらには、危険がある所には人が住まないように決めるのか…。まさに、災害対策の根本となる哲学が必要とされている。

今回の大震災は、私達の目指すべき社会や生活のあり方など、すべてについて根本的に見直してみる必要があることを我々に示唆した。災害研究も、災害メカニズムの究明や防災技術の開発にとどまらず、災害対策のあり方から議論していかなければならないだろう。

先生の研究室や活動を知りたい人はこちら
群馬大学地盤工学研究室
http://geotech.ce.gunma-u.ac.jp/

先生への感想・質問がある場合はこちら
※◎を@に変更してメールをお送りください。
ugai◎ce.gunma-u.ac.jp

本人写真

うがい・けいぞう/1948年宮崎県生まれ。
地震による地すべりが国内外で多発していたことから、そのメカニズムの解明や対策技術の開発を最近のメーンテーマにしてきました。今回の大震災を受けて防災研究の考え方に大転換が必要であると考えています。また、これからの社会のキーワードである環境、防災、エネルギーを統合した学問体系を作ることが必要であると感じており、専門である地盤環境・防災工学の中でそれをどのように実現すべきか思案しています。

本サイトは、経済産業省のキャリア教育事業の一環で作成した「わくわくキャッチ!」の独自コーナーとして、河合塾が作成し、運営しています。
Copyright(c)2011 Wakuwaku-catch.All Rights Reserved.
河合塾河合塾