自分の適性は、探したからといって見つからない
田村 幸雄 | 東京工芸大学 工学部 建築学科 |
大学で何を学んだか、これは人生を大きく決めます。どんな仕事が自分に合っているのかと、自分の適性を模索(もさく)する人がいます。これも多少は必要ですが、基本的には正しい方向ではなく、そういう人の多くは一生模索で終わります。
はじめから自分に合ったものなどありません。ある一つのことにじっくり取組み、勉強し、訓練し、必要な知識やスキルを身につけ、切磋琢磨(せっさたくま)して、はじめて適性が自分自身の中に育まれるのです。何かやってみたいと思うものを決めたら、まっしぐら、一生かかって達人の域まで進むのです。ただ、学ぶ上で注意が必要なのは、知識をファイルすべき科目と、訓練性の高い科目とがあることで、これは意識しておく必要があります。
私の専門とする耐風工学は、建築物等を風に耐えられるように設計し、人命、財産、生活を強風から守るためのものです。東京スカイツリーなどの超高層建築物や、幕張メッセなどの大スパン建築物は、地震力もさることながら、風圧力の影響が非常に大きく、それに耐えるように設計するのが、実現の大きなポイントです。
ところで、バングラデシュなどのサイクロン被害では一度に数十万人の人が亡くなる例があります。また、米国のハリケーン「カトリーナ」などの例にもあるように、先進国では経済的損失が非常に大きく、世界の自然災害による経済的損失の大半が、実は強風および関連する水災害によるものなのです。風関連災害リスクの低減も耐風工学の社会に果たすべき大きな役割です。
私は九州で育ち、台風時に自宅の床上浸水や小学校の恩師を亡くした経験があります。台風で家が壊れる夢をよく見たものです。大学院生の頃から、風災害の現場に数多く入り込み、災害の実態をまのあたりにしてきました。災害リスク低減は、アカデミズムだけではなく、国連、国などの防災関連機関、地方行政庁、NGO団体などとの密接な協力がないと実現せず、その構築にも努力しております。
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