人の命を救う交通工学~逆転の発想で信号無視が減少

安井 一彦   日本大学 理工学部 社会交通工学科
交通工学 /研究領域:最新の交通信号制御手法の開発、交通事故対策 ]

ここ10年間で、交通事故の発生件数や死亡者数は、大きく減少してきました。道路や車両に様々な交通安全対策が実施され、安全性が向上したのも大きな一因です。しかし、それでも毎年4千人以上の方々が、交通事故によって亡くなられており、今回の地震・津波災害と比較して、大きな交通災害といっても過言ではありません。

私の専門は交通工学という分野です。その中でも、交通信号制御(せいぎょ)の高度化による交通事故の抑止を中心に研究を行っています。例えば、押しボタン信号機のある横断路では、深夜や早朝などの交通量の少ない時間帯での歩行者の信号無視が、死亡事故の原因となっています。押しボタンを押しても、すぐには歩行者信号が青にならないため、押しボタンを押さずに横断するからです。そこで、産・学・官共同で、信号無視のできない信号(歩行者優先信号制御)の開発、実証実験を行いました。具体的には、発想を変え、車両が押しボタンを押す(画像センサーで検出する)、車両がいなければ、歩行者の青信号がずっと継続するという仕組みです。

すなわち、歩行者にとって信号無視をしようとする場合には、必ず車両がいる(衝突してしまう)ということになりますので、歩行者の信号無視は激減しました。また、待ち時間も大幅に減少して、地域住民からも好評でした。このように、ちょっとした発想の転換が、システムを大きく改善することになります。研究活動を通じて、医者でなくとも、人々の命を救える学問は、他にも、まだまだたくさんあります。

私は、新潟中越地震で実家が被災しました。その際、復興に当たって救援物資や人員をいかに効率的に現地まで運ぶのかが大きな課題でした。すなわち交通工学という学問が大きく関わっていると実感しました。皆さんも交通工学という分野に進んでみませんか?

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やすい・かずひこ/1959年新潟県生まれ。
鉄道や自動車に興味があり、大学では交通を専門に学びました。現在は、交通工学という分野で、交通事故を減らすような新しい交通信号制御手法について研究をしています。交通を学んでみませんか?興味のある学生の方は、ぜひ、学科ホームページをご覧下さい。

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