「才能」あるものの「責任」とは~人類が全生物に負う責任

平田 隆幸   福井大学 工学部 知能システム工学科
非線形科学 /研究領域:群ロボット、形の科学 ]

「大きな力には、大きな責任がともなう。」映画スパイダーマンで、主人公の伯父がスパイダーマンであるピーターに残す言葉である。同じような意味のことは、大江健三郎の作品にも、「与えられた才能は、個人のためにあるのでなく、その才能を生かす義務がある」という形で書かれている。また、黒木メイサ主演で映画化された、バレエを題材とした曽田正人の漫画「昴(すばる)」においても「才能とその責任」ということが一つのモチーフとなっている。

見えやすい形の「才能」が取り上げられることが多いが、「才能」とは特別なものではない。すべての生物は生きているだけで「才能」を有している。自然界の「知能」を学べば学ぶほどますます強く感じる。

自然界を手本に、人工的に知的システムを構築しようとする試みがなされている。例えば、蟻(アリ)を見てみよう。蟻は、あの小さな体に驚異的な知的システムを実現している。蟻は、巣をつくり、子供を育て、えさをとり、さらに、外敵から身を守る。ディズニーのアニメ映画「バグズ・ライフ」では、蟻は擬人化され誇張されているが、現実の蟻も「バグズ・ライフ」の蟻に負けず劣らず知的な行動をする。

私たちは、約1兆個のニューロン(神経細胞)を使って、ものを考え、体の動きを制御し、生活をしている。蟻は、10万個ほどのニューロンしかもっていないにもかかわらず、知的なシステムとして自律して行動し、繁殖している。
ここで、象徴的に蟻を取り上げたが、「単細胞生物をふくめ生物は、奇跡のように精緻(せいち)なシステムである」。生物は、生きているだけで奇跡的な「才能」を持っているといえる。

人類は、かりそめにも地球上の生物の頂点であり、地球環境へ大きな影響を与える力を持っている。人類は、地球上の生物全体に責任を負うべき「才能」をもった生物であると自覚しなければならない。さらに、自覚したならば、何をなすべきだろうか。答えは、おのずと明らかに思える。

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ひらた・たかゆき/1958年大阪府生まれ。
群ロボットやニューラルネットワーク、さらには人間の身体運動を通して、「知能」を明らかにしたいと思っている。

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