細分化された心理学、人間と社会への広い視界を

永田 良昭   学習院大学 名誉教授
心理学 /研究領域:社会心理学 ]

専門は心理学です。人と人の関係とその集成である社会の成り立ち方を理解することがテーマです。心理学は、人が社会から受ける影響には関心をもってきました。他方、社会のあり方はどのような仕組みによって決まってくるのかという視点は不十分であると思います。例えば、今、人の絆(きずな)の大切さが叫ばれていますが、その絆の形成がどのようにしてなされるかには関心が薄かったと思います。

学問は、研究の積み重ねや、研究者の視点の変化から次々と新たな研究課題が提起されます。現実の生活からいままでは見えなかった問題が見えてくることもあります。その結果、研究分野が細分化されていきます。その意味では私の専門は社会心理学です。心理学がいくつかの体系のもとに分化するのは悪いとは思いません。しかし、○○心理学、△△心理学、○△心理学がそれぞれ固有の体系をもち、異なる論理によって研究が進められることがよりよい人間理解をもたらすのか、異質の問題に取り組んでいるようでも、実は共通の基盤が存在するのではないか、を考える必要があります。

学問は、分化と総合という流れの中を振り子のように動きながら展開して行きます。細分化と同時に、分野の間の垣根を払って広い視点からの学際研究が期待されます。心理学には、それだけの広がりと可能性があります。しかし、現状は、あちこちにたくさんの出店をつくる一方で、各出店間の連絡もなく、それぞれが孤立しているように見えます。そのために、心理学の全体像が見えなくなっていると思います。これは心理学を現実に役立たせたいとする傾向が強いだけに注意すべきことだと考えます。人間と社会への広い視点なしに行き先不明のまま目の前の問題の技術的解決に走りかねないからです。将来、研究者や専門家を目指すかどうかは別として、多少とも学問に触れようとする方々は、心理学に限らず自分が学ぶ学問の視界を確かめながら勉強して欲しいと思います。

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本人写真

ながた・よしあき/1935年東京都生まれ。
人と社会の関係を双方向的関係としてとらえることを目的として研究をしています。具体的には、人が人と係わるとはどのような意味をもっているのか、例えば孤独感は何を意味しているのか、などという側面から実験や調査を行ってきました。本文に記した意図を多少とも実現させたいと、一書を準備中です。

被災された生徒・先生方へ

被災された方々の苦しみ、絶望、やり場のない怒りは、私たちの想像を超えたものだと思います。私に何ができるか、いろいろ考えます。遠回りであると思いますが、本文に記した意味で、より深く学問を追求し、それを世の中に還元することが基本なのだろうと考えます。

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