普通の人でも後世に残るものが作れる~土木技術者への道
柴山 知也 | 早稲田大学 創造理工学部 社会環境工学科 |
2011年3月11日の東北地方の津波では、津波来襲時に人命を守る最後の砦(とりで)である防潮堤が各所で破壊され、破壊されなかった防潮堤も津波が乗り越えてしまい、集落を津波が襲いました。津波の脅威(きょうい)から人々の生活を守っていくには、誰かが将来の防災計画の作成、防災構造物の建設など他の人ができない社会的な機能を担(にな)っていくことが必要です。皆さんには津波を含めて何かの分野の専門家に成長していくことが求められています。
皆さんがこれから自分の人生の進路を決めようとするに、まず自分はどのような分野の専門家になりたいかということを考えてみることを薦めます。そのために自分の目標になり得るような先人を知ることは、自分の将来の姿をイメージするためのヒントになるでしょう。
私は高校生のころは橋や高速道路・鉄道などの大規模構造物を建設する土木技術者を漠然(ばくぜん)と夢見ていました。その頃に読んで力づけられた本は、内村鑑三先生の『後世への最大遺物』という講演録です。この講演は、岩波文庫青版(119番)に収録されています。その中には、特殊な才能に恵まれているわけではない普通の人間が後世の人に遺(のこ)せるものとして、土木事業があげられていました。農家の兄弟が協力して芦ノ湖から静岡県側に農業灌漑(かんがい)用にトンネルを掘り、箱根用水を開いた話はその中に取り上げられたエピソードです。内村先生は、後世に遺物を遺せる土木技術者になりたいと考えていたのです。
同じ内村先生の講演に「デンマルク国の話」があります。1864年にドイツ諸邦との戦争に敗れ、領土を大きく失ったデンマークが、残されたユトランド半島を、荒地からどのように豊かな実りの大地に変え、当時としては画期的な持続可能な国土を作っていったのかという物語です。ここでも灌漑、植林などの土木事業が大きな役割を果たしました。私は土木技術者として社会に貢献するというイメージを持って、大学に入学し、防災研究を行う人生を歩むことになりました。
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