言葉の力、文学の言葉の可能性、そして文学者の使命

原田 範行   東京女子大学 現代教養学部 人文学科
18世紀英文学 /研究領域:比較文学・比較文化論、印刷出版文化論 ]

私は、18世紀英文学を中心に研究・教育をし、また著作や翻訳をしています。言葉は、私たちのそばにあり、ふだんはほとんど意識しませんが、しかし私たちは、考えるためにも感じるためにも、人生を語ったりするためにも、言葉を使います。言葉はまた、人の命を救うこともあれば、命を奪うこともある。友人の言葉に助けられることもあれば、「合格」「不合格」といった二、三文字に人生を左右されることもあります。

そんな言葉の多彩な世界にどっぷり浸(つ)かってみたい、高校生の頃、私はそう考えるようになりました。特に文学の言葉は、法律や経済、自然科学などに使われる言葉と違って、定義があいまいで意味も流動的、しかも日常生活に深く根ざしていて、どこから学問になるのか範囲もはっきりしません。でも、それだからこそ、私たちが体験するさまざまな世界、それこそ五感から得られる諸々の情報を統合し、人生の多様な姿を理解可能なものにできるのではないかと感じたのです。しかもそういう言葉の可能性を、母国語とは別の英語で探ってみたら、さらに面白いのではないか。英文学を専攻することに決めたのはそんな理由からでした。

私の専門分野には、『ロビンソン・クルーソー』や『ガリヴァー旅行記』、『フランケンシュタイン』といったイギリス小説の傑作がありますが、実はそうした「近代小説」という言語表現ジャンルは、当時生まれたばかりでした。散文と呼ばれる日常的な文章によって、無名の個人が社会で繰り広げる人生を物語(ストーリー)にすること、そしてそういう物語を多くの読者が共有し、歴史(ヒストリー)を作って行くこと―私はそういう近代小説誕生の内に、言葉で物語を紡(つむ)ぎ、それによって人生を、そして新たな社会を作ろうとする人間のエネルギーを感じます。言葉が生み出すそういうエネルギーを伝え、さらなる言葉の可能性を探求していくこと、それが私の研究者としての使命だと考えています。

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はらだ・のりゆき/1963年生まれ。
近代小説の誕生期にあたる18世紀のイギリスの小説、ジャーナリズム、韻(いん)文(詩)の社会的役割の変化などを研究しています。また、当時の識字率の推移や印刷出版文化の変化、現代英文法の確立などにも関心を持っています。

被災された生徒・先生方へ

たとえ明日この世が滅ぶとも、今日私は林檎(りんご)の木を植える―多くの蓄積や思い出を一瞬にして失うことの衝撃を、私も強く感じました。そしてそれだからこそ、私はこの言葉の意味を思います。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

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