まちづくりはまさに今から始まる~なし得なかった課題へ挑戦の時

佐藤 滋   早稲田大学 創造理工学部 建築学科
都市設計・計画、まちづくり /研究領域:市街地環境整備、都市計画史、防災・復興まちづくり ]

早稲田大学の建築学科では、新入生ガイダンスですべての教員が10分程度のスピーチをします。今年も1ヶ月遅れのガイダンスでしたが、大隈講堂で先生方が、専門を超えたお話をなさいました。今年印象的だった事は、何人かの先生がスピーチの締めくくりに、「これから一緒に勉強しましょう」とおっしゃった事です。このような言葉はこれまであまり聞かれませんでした。

建築や都市づくりを専門に学び研究・実践をする建築学科の教員にとって、それだけこの東日本大震災は衝撃的な出来事でした。この被災地をどのようにして復旧・復興させるか、まだ、先の見えない状態が続いています。しかし、だからこそ、新しい方法や考え方が生まれて来るのであり、真摯(しんし)な、そして無垢(むく)な新入生を前にして、決して謙遜(けんそん)ではなく「一緒に勉強しましょう」という言葉が、口をついたのだと思います。大災害は不幸な出来事ですが、そこからの復興を目指して、気持ちを一つにして柔軟に新しいものを受け入れて、これまでなし得なかった課題に挑戦する絶好の機会でもあります。

一つ一つの建築の組み合わせで成り立っている現代日本の都市の現状は、正直言って、美しく快適とは言えません。これまで、経済成長一辺倒で、生活空間や基本的な安全性・快適性をみんなで力を合わせてつくりあげようと言う機運に乏しかったのです。

心地よく調和したまちや建築のあり方を考え直して、つくりあげることに、今、みんなで挑戦しなければなりません。ただ建物を設計し建てるだけでなく、そこから始まって「まち」や集落、都市のあり方を構想する、そんな事がこれから数十年、建築の主要な課題と挑戦する分野になるのです。このことは、建築だけではなくあらゆる科学や知恵を結集する必要があります。そして建築は、それらを組み立てて、姿かたちにまとめあげ、表現する役割を担(にな)うのです。さあ、みんなで挑戦しようではありませんか。

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さとう・しげる/1949年千葉県生まれ。
1973年早稲田大学理工学部建築学科卒業、1990年教授に就任。建築の集合体としての都市づくり・まちづくりの実践的な共同研究を行い、市民と専門家が連携する新たなまちづくりの方法の確立に取り組んでいる。日本建築学会会長

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