身近からわき出る「はてな?」を解決するのが学問

原 彬久   東京国際大学 名誉教授
国際政治学 /研究領域:日本政治外交史、とくに安全保障をめぐる戦後日本の政治外交史の実証的研究 ]

私は国際政治学という学問を研究し教えてきました。国際政治学といっても、その内容は広い範囲にわたりますが、とくに政治外交史、そのなかでも第2次大戦後の日本の政治外交史を研究してきました。私の関心の中心は、「戦後日本とは何か」、ということです。これを解明するための一つの道が、大戦後の政治外交史の研究だったのです。つまり、私たちの「いま」を知るために、過去の膨大な出来事を学問的に整理・再構築し、なおかつその歴史の意味を考えるということです。

学問は、決して「高級品」ではありません。どんな学問も、私たち一人ひとりの足もとから出発しているのです。違ったいいかたをすれば、私たちが毎日の生活のなかで何気なく「はてな(?)」と不思議に思っている、単純かつ素朴な疑問から学問は生まれるのです。

私が政治外交史を研究するようになったそもそものきっかけは、実は子ども時代の漠然(ばくぜん)とした「問い」のなかにあったように思います。戦争が終わって10数年、それは私の少年時代と完全に重なりますが、敗戦国日本のあの惨劇(さんげき)を、北海道の片田舎(かたいなか)で一人の少年はじっと目を凝らして見ていました。なぜ日本は戦争をしたのか。なぜ僕たちは戦争に負けて、いつもジャガイモばかり食べているのか。なぜ学校の先生たちは授業を休んでデモをしているのか。自分に対するこんなとりとめのない問いかけが、やがてどこかで「戦争と平和」、「国の政治と外交」の研究へと私を導いてくれたように思うのです。

もちろん、身辺からわき出るこんな疑問が、そのまま私の学問に結びついたわけではありません。しかし、私たちが困難な状況にあればあるほど、私たちの「はてな(?)」はそれだけ強く鋭くなり、だからこそそれを解決するための学問へと行き着くのです。今回の大震災は日本の悲劇です。でも、この悲劇は皆さんにたくさんの「問い」を投げかけています。学問は、「問い」を背負った若者たちを待っています。頑張りましょう。

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はら・よしひさ/1939年北海道生まれ。
私の大学時代は、いわゆる「60年安保」(日米安保条約の改定)と重なります。激動の政治のなか、「学問とは何か」を考えさせられました。中高生向け著書として『岸信介-権勢の政治家』(岩波新書)、『吉田茂-尊皇の政治家』(同)。

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