運命の「出会い」をキャッチする。君は変わる

越川 芳明   明治大学 文学部 文学科 英米文学専攻
現代アメリカ文学 /研究領域:ボーダー文化、ポストコロニアル文学、クレオール ]

きみは、17歳です。まだ将来の進路も決まっていません。きみはこの世の中に、勉強以外にもたくさん大切なものが、未知の世界や人との出会いがあることを知っています。

受験勉強に明け暮れて、やがてきみは大学に入りますが、まるで、蛹(さなぎ)から孵(かえ)ったばかりの蝶(ちょう)が、春の陽(ひ)ざしを浴びて花から花へ飛びまわるように、1年間は大学の外で「遊んで」ばかりいます。羽根を休めるときだけ、大学に顔を出しますが、自分で何をしてよいのかも分かりません。

あるとき、きみにとって運命的な出会いがあります。アメリカ合衆国での在外研究を終えたばかりの岩元巌先生の講演会があります。テーマは、現代アメリカ文学の動向。とても新鮮です。まるで巣の中で卵から孵ったばかりの雛(ひな)鳥に餌(えさ)をやる親鳥のように、かみ砕いて、自分の言葉で語ってくれた先生はいなかったからです。やがてきみはその先生の下で学ぶことになります。学問研究にはピラミッドのような体系があり、広い裾野(すその)を持つ基礎からこつこつと積みあげる必要がありますが、きみは苦になりません。

それから数十年後、きみは中年期の危機に直面します。長い旅に出て、サンディエゴという町にいます。メキシコ系アメリカ人の文化(料理・音楽・暮らし)が息づいています。そんな町で、アンサルドゥアという名の詩人の本に遭遇(そうぐう)します。国境地帯のメスティーソ(混血)の歴史や暮らしが英語とスペイン語でつづられた不思議な本です。きみは英語だけでは征服者の側の考え方しか分からないと直感し、スペイン語を習います。それから複雑なメンタリティを持つ被征服者の文化を吸収しようとします。まもなくキューバの独立の父ホセ・マルティの「思想は他者への奉仕である」がきみの座右の銘になります。

いま、きみには分かっています。人生という「死」にいたる「旅」の道中には、運命的な「出会い」が待っており、それによって、かつて自分が思ってもみなかった道を歩むことになることが。

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こしかわ・よしあき/1952年千葉県生まれ。
アメリカ合衆国、メキシコ、キューバなどの「アメリカス(南北アメリカ)」の文学の研究。文献読解や文化人類学的調査などによって、複数の「国家」や「エスニシティ」や「言語」にまたがる文学を研究する。

被災された生徒・先生方へ

キューバのフィデル・カストロは、「旋盤(せんばん)が金属片を削るように、困難こそが人を形づくる」と、言っています。難問や不運に遭遇し、それを克服しようと全力を尽そうとするときに初めて、その人の個性が形作られるというのです。

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