学びは変わらない~「今まで通り」がなぜ必要か

沼崎 一郎   東北大学 文学部 人文社会学科 文化人類学専修
文化人類学、民俗学 /研究領域:東アジア、社会ネットワーク、人権 ]

3月11日の地震と津波、そして東京電力福島第一原子力発電所の事故は、多くの中高生の皆さんにとっては、これまで体験したことのない大事件だったことでしょう。しかも、事件はまだ終わってはいません。余震は続いていますし、原発事故も収束にはほど遠い状態です。被災地の復興は緒(ちょ)についたばかりです。先の見えない不安な日々が続いています。

こんな時にふだん通り勉強していていいのか? 授業なんかより、ボランティアに駆けつけるべきじゃないか? 科学も技術も頼りにならないのでは? 今までとは違う勉強が必要なんじゃないか? 皆さんも、そうした不安とあせりを覚えるのではないでしょうか。

しかし、そんな今こそ、いつもと変わらぬ「学び」が求められるのです。それは、英数国をしっかり勉強することであり、理科や社会をおろそかにしないことです。受験に関係ないからいいや、と思ってはいけません。地震と津波が教えてくれるのは、地学の大切さであり、原発事故が教えてくれるのは、基本的な物理や化学の知識の大切さでしょう。政治が混乱すればするほど、公民の知識が求められます。風評被害に惑わされないためにも、地理の知識が重要になります。歴史は、かつて何度も東日本が大津波に襲われていたことを教えてくれます。そして、理科や社会の勉強をするには、英数国の基礎学力が欠かせません。

皆さんが中学高校で学ぶことのなかには、人類が長い歴史のなかで見出してきた「不変の真理」が多く含まれています。たとえば、直径と円周の比は、地震が起きようが、津波が来ようが、少しも変わりません。円周率の値は不変なのです。なによりも、そうした不変の真理を求め続ける人類の姿勢は、昔も今も変わりません。ソクラテスの学びも、皆さんの学びも、同じ学びなのです。不変の真理を求めて、いつまでも考え続けること。それができるように、基礎的な知識を身につけること。つまり、今まで通り勉強を続けること。それが、皆さんが「今すべきこと」なのです。

先生への感想・質問がある場合はこちら
※◎を@に変更してメールをお送りください。
numazaki◎sal.tohoku.ac.jp

本人写真

ぬまざき・いちろう/1958年宮城県生まれ。
人間について「全てを知りたい」と思い、たった一人で異文化の全てをフィールドワークする人類学に憧(あこが)れた。アメリカに留学し、ミシガン州立大学大学院で人類学博士を取得。博士論文研究のため、台湾で3年間フィールドワークを行う。日本の人権運動、特にセクハラやDVなど性暴力被害者支援運動にも参加。料理も得意。

被災された生徒・先生方へ

私が暮らす仙台の街にも震災の爪痕(つめあと)が残っています。津波被災地の復興は、始まったばかりです。原発事故の結末はまだ見えません。しかし東北大学では、学生たちも教室に戻り、ようやく「学問」が再開しました。学生と一緒に「学問する」喜びを日々痛感しています。我々の本分は学問にあります。ともに、本分を尽くしましょう!

本サイトは、経済産業省のキャリア教育事業の一環で作成した「わくわくキャッチ!」の独自コーナーとして、河合塾が作成し、運営しています。
Copyright(c)2011 Wakuwaku-catch.All Rights Reserved.
河合塾河合塾