津波にはとにかく避難、防浪ビルや避難ビルの整備も

松冨 英夫   秋田大学 工学資源学部 土木環境工学科
水工水理学 /研究領域:津波、洪水氾濫、広域漂砂 ]

身の回りには危険なことがたくさんあります。自然災害ばかりではありません。危険なことを完全になくすことはできませんが、対応次第で減じることは可能です。

2011年東北地方太平洋沖地震と、それに伴う津波により大災害が発生しました。とりわけ、津波災害が大きなものとなりました。大津波警報の発令後、いずれの海岸でも20分以上の避難時間がありましたが、多くの人が津波の犠牲となりました。「避難」という対応に大きな課題が残されました。

今回の津波災害の特徴の一つは、巨大津波が近代的な街を襲い、木造の建物はほとんどが流出し、鉄筋コンクリート造の建物が残ったことです。ただし、鉄筋コンクリート造の建物にしても、自重の大きなものは持ちこたえましたが、津波の浸水深に比べて建物の奥行きが十分でないものは、転倒や移動・転倒の被害を受けました。1933年昭和三陸地震津波以来、事業所や公共施設を想定して、防潮堤の役割を担わせた防浪ビルの考えがあります。防浪ビルは背後地へ津波の浸入を防ぐばかりでなく、避難ビルとしての機能も持ちます。しかし、津波の浸水深に対して、防浪ビルがどのくらいの高さや奥行きがあればよいかといった指針はありません。

津波に対して安全・安心を確保するには、宅地などの高地移転が理想です。しかし、高地移転先が確保できない場合などもあり、低平地では中規模津波(三陸海岸では1960年チリ地震津波や1968年十勝沖地震津波と考えればよい)に対応するため、強度を向上させた津波防災施設の整備が重要と考えます。ただし、防災施設の整備にあたっては、継続性を考慮する必要があります。防災施設はいずれ改修が必要となり、過大な整備は整備水準の維持を難しくします。巨大津波に対しては防災施設に頼らず、迅速(じんそく)な高所への避難が第一義ですが、水没せず移動や転倒しない防浪ビルや避難ビルの整備も重要と考えます。

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まつとみ・ひでお/1953年山口県生まれ。
津波、特に沿岸や陸上での挙動と流体力の研究。流体力に関連して、漂流物の衝突力や海岸植生の津波減勢効果についても研究しています。地域防災力研究センター長。

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