街は必ずもっとすばらしく再生する~神戸復興に携わって
盛岡 通 | 関西大学 環境都市工学部 都市システム工学科 |
世界中で人の営みがリアルタイムで報じられる現在にあって、東北を襲った大震災と、原発事故に向き合う現在の日本社会は、世界からその振る舞いが注目されています。高齢化が進む地方の町や村であっても、手づくりの福祉サービスをつくり、地域の宝を発見して地場産業の育成に結びつける等をおこなっていた地域は、未曾有(みぞう)の困難にあっても、その取り組みを発展していくことができるはずです。
私も復興計画に携わった神戸は、震災から16年後には建物や都市サービスは復興し、旧の姿に戻す以上の快適で活気ある町になりました。全国からの支援もあって「立て直し」は進めることができたと思います。しかし、港で扱う貨物とそれに関連する金属加工製品、服飾等の生活用品の産業活動を見ると、震災前からアジア都市間で立地競争や産地競争で脅(おびや)かされていたので、低迷衰退を止めて反転させる「構造改革=世直し」には大きな課題が残りました。
だからこそ、医療産業都市とか環境産業振興を掲げて、現在でも新たなチャレンジをおこなっています。もともと、防災と環境を対象とした政策には、重なりが多いのです。私は、環境システムや環境計画を専門として、研究を進めてきました。都市環境計画の実践場として、神戸の環境まちづくりには常にかかわってきました。例えば、温暖化防止プラン、資源循環プラン、さらに自然共生プラン等の立案や評価方法の開発を担(にな)ってきました。工学系の中では市民や企業との連携に近いところに位置しているので、いわゆる文理融合を進めたり、理念と実践とを統合したりする現場の中にいました。
だからこそ、都市や社会を持続可能な様式に変える「サステイナビリティ学」や社会の脆弱(ぜいじゃ)く性を発見して対処する「リスク学」にも常に学問的な関心を持ってきました。ビジネスの現場では、環境まちづくりの成果を「環境未来都市」として海外に輸出するところまで来ています。それだけに、学問の側では、「それは本当に低炭素型なのか」という形で突き詰めておき、一つ一つの行動の裏にある環境上の効果を曇りのない眼で的確に計測、評価する方法としくみを提案、検証していくことを担(にな)っていくべきと考えています。
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