働きながら博士号、ついに科学者になる夢を実現
林 康明 | 京都工芸繊維大学 工芸科学部 電子システム工学課程 |
現在、私は大学で“プラズマ科学”を専門として研究や教育を行っています。物質は温度が高くなるにつれて、固体、液体、気体と変化しますが、さらに高いエネルギーが与えられると原子や分子の中から電子が飛び出し、残された正イオンと再結合・電離を繰り返しながら全体でほぼ中性を保ちます。その状態がプラズマです。電子のエネルギーで原料となる気体を分解し、電子機器中の素子に用いる材料を作ることができます。液体や気体のみの熱反応とは異なって、新奇な材料を合成できるのが特徴です。最近は、ナノテクノロジーを生かした新しい電子素子を開発するために、プラズマプロセスを制御する方法について研究を行っています。
私が科学者になりたいと思い始めたのは中学生の頃からで、発明や発見をして未知・未踏の世界に踏み入れることにあこがれていました。大学は理学部か工学部で物理系の学科に進もうと考えていましたが、当時、最先端の研究については、持ち合わせた知識の範囲内で想像するしかありませんでした。一浪の後、目的に近いと思った原子核工学科に進み、大学4年間は夢中で勉強しました。
大学院の修士課程に進んで具体的に研究をするようになると、自分の考えていたイメージとの相違に悩み、結局、企業に就職して技術者の道を歩むことになりました。しかし、中学生の時からの夢は捨てきれず、仕事をしながら博士号を取得して大学で研究者となれないものかと努力を続けていました。そして就職してから15年目にそうした機会に恵まれ、今に続いています。
そこで中・高生に述べたいのは、まず夢や目標を持ち、歩みだすこと。しかし、予想との違いや様々な現実によって打ちのめされてしまうことがほとんどです。でも、自分が目指していたのは何なのかを振り返り、それをどのようにすれば実現できるのかを工夫しながら辛抱強く挑戦していくことです。困難や失敗を恐れず目標を見定めて進んで行けば道は開けて来るものです。
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