異分野同士の知識の融合が人に優しいシステムを生み出す

松本 直文   足利工業大学 工学部 創生工学科 情報システムデザイン学系
デザイン最適化、システム最適化 /研究領域:生物(アリや鳥など)に学ぶ最適化手法、コンピュータグラフィックス(CG)、バーチャルリアリティ(VR) ]

最近の大震災に関連した話題から、システムの適切なデザインがいかに大切かを改めて考えさせられます。たとえば、携帯電話システムの接続トラブル、不明者の安否確認システムの提供、銀行のATMシステムの不調と修復、原子力発電システムのトラブルと安定化に向けた作業計画、生産システムの崩壊;世界の組み立て工場への影響、品不足と物流の問題、発電・送電システムの見直し・コミュニティ密着型への移行、ガス・電気・上下水道・道路などのライフライン・システムの復旧計画、帰宅難民・道路渋滞の原因と解消法・回復スケジュールの問題など、じつにさまざまな例があります。

いずれの問題も受験問題とは違って、答えは一つとは限らないし、最適な答えの探索も難しいかもしれません。不幸にして、大震災以降の新聞を含めた様々なメディアには、このような問題解決の難しさを伝える記事であふれています。人の不安・不満・不思議を解消し、人に優しい、夢のあるシステム創りのためには、単に理工系だけでなく、文系も含めた広範囲の知識の融合が必要でしょう。

ちなみに、私の研究室のキーワードは、IT、システム、最適化手法、コンピュータグラフィックス(CG)・バーチャルリアリティ(仮想現実;VR)などですが、いずれも様々な工学的分野を横につなぐ分野横断型技術です。また、このような問題解決は、一人の力では困難です。異分野の人が集まったチームで問題解決を図るときには、何よりも相手の考え方を理解すること、すなわち文理融合が重要だと思います。

このような状況だからこそ、中学・高校生諸君には、当面の視野にある受験の先を見すえ、できるだけ文系・理系の境をなくして学んでいただきたい。必ず10年・20年後の日本と世界をより良くする原動力になります。これが勉学をより楽しいものにし、知識や考え方の吸収力を高めるはずだと信じます。受験で学ぶ領域は今解決すべき問題を解くための基礎であり、また諸君が将来高みを目指して構築する専門を支える土台となるものです。

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まつもと・なおふみ/1947年京都府生まれ。
大学4年の夏、アポロ月着陸の実況でそのシステムに感動。大学院でジェットエンジンなどのエネルギ変換システムを中心に研究。航空宇宙技術研究所(現JAXA)で客員研究官として超音速輸送機エンジンの研究にも従事。最近は、より良いデザインへのCG応用やシステム最適化がテーマです。今は応援側ですが、学生時代は野球・サッカー・テニスと手当たり次第。人の役に立つものとは何かを学生と考えるのが趣味?「物理の散歩道」や「自然界における左と右」は印象に残っている本です。情報科学センター長。

被災された生徒・先生方へ

この度の大震災で犠牲となられた方々へ深い哀悼の意を表し、被災された生徒や教員の方々への心からのお見舞いを申し上げます。皆で力を合わせて人に優しいシステムは何かを考え一刻も早い回復と復興を目指しましょう。

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