現場に対し謙虚に~それでも学問は役に立つ

藤本 隆宏   東京大学 経済学部
ものづくり経営学

皆さんの中には、震災の被災現場の中にいる人、停電や節電で影響を受けている人、影響の少ない人、いろいろな人がいると思います。被災地の人は、「ここの惨状は現地でなきゃわからないよ」とお考えかもしれません。外にいる人は、「何か自分にできることは無いのか」と自問しているかもしれません。

しかし、被災地が救援から復旧、復興へと変わっていく中で、それに必要な知恵や道具や設備や仕組みを、被災地の中と外の人々が一緒に作っていく場面は増えてくるでしょう。被災現場では、勇気ある人々が奮闘(ふんとう)中ですが、彼らの精神的・体力的な頑張りだけに、数年間も頼ることはできません。

これからは、被災地の復興のために、全国・全世界の「現場」が働く機会が増えます。原発安定化のための無人機、がれき撤去の道具、節電の工夫、復興のための建設機械の開発、避難所での健康の確保、被災者の心理的ダメ―ジのケア、等々です。そして、そうした知恵を支えるのは、理系も文系も含め、様々な学問です。実際、復旧・復興現場の人たちの多くは、何らかの学問を利用しています。

日本、とくに東北は、津波対策も原発対策も世界最高水準だったはずなのに、巨大な被害を避けられませんでした。巨大な自然災害の前には、理系も文系も含め、学問や技術の限界は明らかです。学問は常に、現場の現実に対し謙虚でなければいけません。

しかし、それでも、現場の知恵とうまく組み合わせれば、学問は役立ちます。

今の学問は、大災害は防ぎきれませんが、復興には役に立ちます。復興とは、人工物の復旧と再建でもあるが、人の心の快癒(かいゆ)と再成長でもあります。だから、工学にも文学にもやれることはあります。

「どうせ学問は役立たないからやめとこう」と、試す前に逃げてはいけません。皆さんが、社会や自分のために何かしたいと考えるなら、まず、本気で学問を試してみてください。

ふじもと・たかひろ/1955年生まれ。
社会科学の理論と現場の知恵と融合して、ものづくりの現場、たとえば、企業の開発や生産やサービスの現場の、競争力や実力や人材育成を支援する、いわば現場発の実証経営学です。ものづくり経営研究センター・センター長。

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