明日を切り開くために~危機にあっても自分を磨け

細田 衛士   慶應義塾大学 経済学部
環境経済学 /研究領域:廃棄物処理とリサイクルの経済学 ]

私が高校生活を送った1970年頃、水俣病を初めとする環境問題やベトナム戦争で世相は騒然としていました。特に1970年は日米安全保障条約延長の時にあたり、日本はアメリカとソ連の冷戦に巻き込まれるのではないかという危機感が若者の心に重苦しくのしかかっていました。

そんな時にのんびりと受験勉強などしていてよいのか、勉強とか学問とかをやっても今の危機を乗り越えるのにどう役立つのかと悩んだものでした。実際、学園集会のために授業をボイコットするということも頻繁(ひんぱん)に起きていました。考えるよりも行動が先だ、と思うのも当然のことかもしれません。

しかし一方で「なぜ公害が起きるのか、どうしたら公害を食い止めることができるのか」、あるいは「いかにしたら戦争を抑止することができるのか」と真剣に考えることの必要性にもひしひしと迫られていました。いや、こんな時にこそ世界のあり方、社会のあり方を根源的に考えてみなければならない、そうしてこそ初めて世界を変えることができるのではないかと思うようになりました。

折しも「浅間山荘事件」を目の当たりにして、単なる思い込みだけの行動は結果を伴わないだけではなく、最悪の事態をもたらすという確信が生まれました。今目の前にある危機を乗り越えるためには、どうしても冷静な分析と考察が欠かせないことがわかったのです。そして私の選んだ道は「経済学」でした。経済を変えることによって危機を乗り越え、社会を変えることができると考えたからです。

1868年、官軍と幕府軍が上野で戦ったいわゆる上野戦争のとき、江戸の人々は平静を失っていました。そんなとき、福沢諭吉は芝新銭座(当時慶應義塾があった場所)でウエーランドの経済書を塾生と読んでいたのでした。どんな危機にあっても日本で学問の火を絶やさない、それが福沢の思いだったのです。明日を切り開くために自分を磨く、それが今一番大事なことだと思います。

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ほそだ・えいじ/1953年東京都生まれ。
経済学の観点から環境問題を分析しています。特に廃棄物処理とリサイクルの制度設計を主要研究対象としています。震災廃棄物の円滑な処理・リサイクルのために経済学がどう貢献できるか問われていると思っています。

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第2次世界大戦中のことです。ナチスドイツによる猛烈な空襲の合間を縫って、イギリスのさる有名な老教授は、被災をかろうじて免(のが)れた教室で市民のために講義を続けたそうです、明るい明日が必ずくることを信じて。

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