親の勧めた機械工学で就職、でも再び学んで刑法学者に

大嶋 一泰   岩手大学 名誉教授
刑法 /研究領域:刑法における義務衝突の研究、末期医療と義務衝突の研究、正当防衛・緊急避難・正当行為などの違法性阻却事由の研究 ]

まず何を専攻したいか、何を生業として生きていくかを決めることが大切です。私は高校を卒業したとき、親の勧めで機械工学を専攻しましたが、計算が不得意であったため、工学部をどうにか卒業し、ある工場の設計課に勤務しましたが、2年で辞めてしまい、法律学に転向しました。そして、刑法学を専攻し、その理論性と社会に起こる刑事事件の処理という実務性に大変興味を持ちました。

学問をするには、良い先生につき、しっかり基礎を身につけることから始めなければなりません。そして、日本の文献だけでなく外国の文献をも調べ、古典だけでなく、最先端の研究をも参照し、問題の本質を良く見極め、自分の考えをまとめていかなければなりません。私は、刑法における違法性の問題に興味を持ち、正当防衛や緊急避難や義務衝突について、研究し、論文を書いたり、学会で報告をしたりしました。

私の主な研究テーマは、「刑法における義務の衝突」です。例えば、登山家3人A,B,Cがザイルで結び合って、氷河を渡っていこうとしていたところ、2人の登山家BとCがクレバスに滑落(かつらく)してしまったとします。AはBとCを引き上げようと必死に努力しますが、ずるずると引き込まれ、自分もクレバスの奈落の底に落下しそうになります。Aは、その瞬間にザイルを切断して自分だけたすかってもよいかが争われています。私は、Aには、B・Cと運命を共にすべき連帯義務は認められないので、Aのザイル切断は許されると考えていますが、AにはBとCの生命を犠牲にすることは許されないと反対する学者もいます。ここでは、Aにはザイルを切断してはならないという不作為義務と、自己の生命を救うためにザイルを切断すべき作為義務とが衝突していると考えることもできると思います。

たくさんの文献が毎年発表されますので、遅れをとらないように、事務を簡潔に、しかし過不足なく的確に、すばやく処理していくことが大切です。時間を有効に使うこと、そのためには集中して仕事をこなしていかなければなりません。短い時間でもたくさんのことができることをわきまえ、丁寧な仕事をする事をも心がけねばなりません。そのためにはいろいろ工夫が必要ですが、何よりも整理整頓が極めて大切です。

学問をすることは、結局真理の探究なのですが、何が真理なのかはなかなか分かりません。それぞれの専門分野でこつこつと努力を積みかさねていくしかありません。人生を生きるということと同じかもしれません。何かを深く学び、深く問うが学問をすることですから。

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おおしま・かずよし/1934年新潟県生まれ。
日本刑法学会会員。学生時代は、とても貧しく別荘の番人をし、家庭教師のアルバイトと奨学金で何とか暮らしていました。趣味はクラッシク音楽を聴くこと、漱石の小説を読むことなどでした。自分の進路を決めるために、色々伝記を読むことをお勧めします。

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