阪神大震災時の図書館閉鎖がオリジナルを磨く修業に

浅田 秀樹   弘前大学 理工学部 物理科学科
一般相対性理論 /研究領域:理論宇宙物理学 ]

高校のころは数学、理科が好きだったので、理学部への進学を決めました。大学に入り、新入生どうしで自主的なゼミ(勉強会)を行ない、ランダウ・リフシッツの「場の古典論」(東京図書)を輪講(りんこう)しました。輪講とは、参加者で当番を割り当て、担当者が「先生」として説明するものです。単なる読書に比べると、「教える」こととそのための準備が大変勉強になりました。

その本は「アインシュタインの一般相対性理論」(いわば時間空間の力学)に関するもので、結局、いま私の研究テーマこそ「一般相対性理論と宇宙物理学」なのです。ちなみに、優秀な同級生はその本の著者ランダウの名をすでに知っていましたが、私はノーベル物理学賞受賞者であるその名前すら知らない状況でした。しかし、当時の勉強会のメンバーでそのまま一般相対性理論の研究者になったのは私だけです。

今回の震災で、1995年の阪神・淡路大震災を思い出しました。当時、私は大学院生で、大阪にて被災しました。大学図書館の本棚が破損して閉鎖したため、図書や雑誌の借り出しがしばらくできない不便な時期がありました。当時は、学術雑誌の論文を複写して(昔は電子ファイルをダウンロードするシステムが確立していなかった)、その理論計算を必死に勉強して、新しい計算を始めるというやり方で研究していました。しかし、肝心(かんじん)の論文が読めないわけですから、自分でオリジナルの計算法を「開発する」しかない状況に陥(おちい)ったのです。研究の質は「他人マネは二流」で「オリジナルこそ重要」なので、後から思えば、結果的には「良い修行」が積めたわけです。

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あさだ・ひでき/1968年京都府生まれ。
一般相対性理論と宇宙の精密観測との整合性に関する理論的な研究を進めています。一般の人は「コンピューターは万能だ」と誤解しているかもしれませんが、コンピューターでは扱えない宇宙の問題を、数式を用いた古典的な手法で解明しようと奮闘(ふんとう)しています。

被災された生徒・先生方へ

不便・不安な時こそ、好きな学問に没頭(ぼっとう)する(あるいは何が好きなのか自問する)のが良いのかもしれません。単なる気分転換というだけでなく、そこでの努力は将来必ず報(むく)われることでしょう。

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