経済史はすごい!数千年の歴史を読み解き、貧困に挑む
岡崎 哲二 | 東京大学 経済学部 |
経済史への私の関心は高校時代、大学受験のために日本史と世界史を勉強していた時に遡(さかのぼ)ります。高校の日本史・世界史では政治史・思想史・美術史など多くの分野の歴史を学びますが、その中で経済史の分野が、知の体系としてもっとも確かなものに思えたのがきっかけです。そして現在、この考えは間違っていなかったと思っています。
その理由は、経済史の研究が、人文社会科学の中でもっとも確固たる理論体系を持つ学問分野である経済学の知見に基礎を置くことができるからです。一組の前提から数学的に仮説を演繹(えんえき)し、その仮説を客観的データによって検証するという経済学の方法は、自然科学、特に物理学に近いものです。経済史の研究は、そのような鋭利な道具を自由に使って、数百年、数千年にわたって人々が蓄積してきた経済的営みの膨大(ぼうだい)な記録を縦横に読み解いていくという作業です。想像しただけでも楽しくなりませんか。しかも、そしてこうした作業は、経済の仕組みを理解し、それを通じて現在の世界の人々の貧困や不幸を削減するという有意義な目標につながっています。
経済史は上のような研究分野であるだけに、その研究のためには多様な能力が必要とされます。数学的に表現された経済理論や統計データ解析の手法を理解して使いこなす必要があります。さまざまな言語や文字で書かれた史料を読解する能力も必要です。そして、それらを用いて得られた知見を総合する豊かな構想力も必要とされます。これはたいへんなことではありますが、逆に幅広い関心と能力がある人にとっては、その適性をいかんなく発揮できる分野であるともいえます。そして少なくとも私の場合、高校時代に学んだ多くのこと、特に英語、数学、古典等が深いところで今日の研究能力の基礎になっていると感じています。高校時代の勉強の直接的な目的は大学受験でしたが、3年間、若い情熱を傾けたことが、現在に至るまで私の人生を豊かにしてくれているのです。
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