大学に入ったら、自分を磨こう。世界に貢献できるように

紺野 登   多摩大学 大学院経営情報学研究科
知識経営論 /研究領域:イノベーション経営 ]

私は経営学の世界で「知識創造の方法」を研究しています。「イノベーション」ともいいます。これは私たちがどのように新しい製品やビジネスのアイデア、つまり知識を創造し、問題解決をおこない、新しい解決の仕方を獲得するかの基本になる考え方です。そのためには、何事も与えられた考えを前提にせず、「現場」に立って自分なりに考えることが大事です。

何か問題があったとしましょう。そのとき頭の中だけで考えないで、まず人と話したり、街に出て観察する。その中で発見した気づきを言葉にしてみる。次に、そのアイデアを筋道立てて見なおしてみる。納得(なっとく)がいったら、また人と話したりしながら一歩ずつやってみる。そしてアイデアが役に立つかを評価する。

皆さんに学んで欲しいのは、いまの「世の中」での生き方ではありません。大人の価値観に染まって、自分の内面から来る声が聞こえなくならないように。皆さんが大人になったときに自分なりのものの見方で判断し、行動できることを目標にして下さい。

確かに人生でうまくやる方法のひとつは、他人の成功例(ベストプラクティス)を聞きつけて、すばやく真似することでしょう。これは楽な方法に見えるかもしれません。けれどもそこには人間本来の満足はありません。学ぶとは、結局はこれまでの世界から抜け出て、自分ならではのものの見方を確立することです。どこかに何かの答えがあって、満点をとることではありません。これまでの「想定」や「仮定」の限界を超えるのが本当の学びだと思います。

ある領域の内側に入り込んでしまうと、その領域そのものが誤りである場合などを想定できにくくなります。たとえば、「安全」や「効率」を求めてシステムを論理化し精度を追求するとかえってそのシステムがもろくなってしまうことがあります。そのためには、広くものを見るマインドや直観力が大事になります。これからますますそうした学び方が求められるようになるでしょう。

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こんの・のぼる/1954年東京都生まれ。
大学で建築を専攻した後、ビジネスにデザインの方法論を応用しようと広告会社で働きました。次にイノベーションやデザインを学問的にも研究したいと思って研究をはじめました。イノベーションとは新たな知識を組み合わせて社会や生活を革新していくことで、組織的な知識の創造とデザインの方法の研究が焦点です。経営は理論と実践の両方が必要です。今回の震災では真の社会の幸福や人間を軽視した企業活動の弱点が露呈(ろてい)しました。本当の変化が望まれていると感じます。著書に「知識経営のすすめ」(ちくま新書)

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