地理学の目で災害を読み解く~地震災害は地盤が鍵だ!
村山 良之 | 山形大学 地域教育文化学部 |
大学を目指しているみなさんにとって地理学というのはわかりにくいと思います。大学によって理学部、文学部、経済学部等バラバラなところに地理学の研究室があります。文系・理系いずれの学部でも地理学を専攻すると、地形学、気候学、経済地理学、都市地理学といった科目を学びます。地理学は、現象をその周りの様々な現象との関わりで見ようとする地域的視点、また現象の空間的側面にこだわる、というクセがあります。
1978の年宮城県沖地震について調査した卒論以来、回り道したこともありますが自然災害に絡む仕事を続けています。2003年宮城県北部の地震では、建築学の方々と一緒に調査しました。建物被災調査において、従来建築学では震動による被災を見ようとして、地盤変状(敷地の亀裂[きれつ]や沈下)をノイズとして扱っていました。そこで、地理の調査チームは地盤変状の多い地区の調査を担当して、これを詳細に記載して、地盤変状が建物被災に決定的に効いていることを明らかにしました。これをふまえた建築学会の建物調査マニュアルは東日本大震災の調査でも使われています。
いま調査しているのは、仙台周辺の丘陵(きゅうりょう)地に造成された住宅地における、地形改変(切土や盛土)と建物被災の関係についてです。これは卒論のときから取り組んでいるテーマで、一部の調査地域は33年ぶり2度目の調査になります。建築学会や地すべり学会の研究者との共同調査として実施しています。過去の事例と同様に切土部で被害がほとんど無いのに対して、盛土部や切盛境界部で被害が多く、1978年と今回と2度とも被災した場所が数多くあります。そして全体として、1978年に比べて今回の方が地盤被害が大きく広域にわたっていることも今回の特徴です。一方この30年で一般の住宅は格段に強くなり、少々の地盤変状ならば建物には大きな被害が及ばないこともわかっています。丘陵地に造成された住宅地は全国に広がっており、大きな課題といえます。
所属の大学院では、防災教育に関する必修授業を担当しています。今年はネパールで防災教育の実践を計画中です。山形と仙台で小中学生向けの授業やイベントをやってきましたが、今回の震災をふまえて、想定以上の災害にも臨機応変に対応できる力をつけることをめざしたいと思います。自然とできるだけうまくつきあえるような地域、学校、子どもたちを育てることが目標です。
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山形大学 地域教育文化学部・大学院教育実践研究科 村山研究室
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