学ぶと初めてその先が見えてくる~ある建築学者の軌跡

渡邉 昭彦   東京電機大学 未来科学部 建築学科
建築計画、建築設計 /研究領域:地区計画 ]

「人はなぜ・何を学ぶのか」について、自分の経験から話してみよう。

[学びに必要な自分の動機] 人は納得(なっとく)できる学ぶ動機が必要で、自分の高校時代までは「公式や歴史など既存の知識」を学ぶ中で問題を解く楽しさと小説や映画等から生き方を学び、学びの持続に「頑張れる言葉や人生の見本」を常に新しく見つける必要があった。

[大学の学びは違う] 高校までの理解と暗記の物理公式が、物理学の授業で「宇宙の中にメッシュを想定し公式へつなぐ考え方」を学び、いろいろな仮定から考察し構築するのが物理と知り、「大学の学び」と感動した。西洋史で「戦後の東西ドイツ境界」は、連合軍とソ連軍到達線というより歴史的背景が異なる境界に到達した結果と知り、「表面に隠れた真実の存在」を学んだ。

[自由と責任からの学び] 「基礎の学び」の後に「美術館等を計画・表現」する自由が楽しく、建築の創造へ「常識から自由になる」ため学んだ。大学で研究・計画者となり、計画した生徒約500人の中学校が実現し、10年で延べ5000人が学校生活を送る影響と責任の重さを学び、更なる「現場からの学び」を続ける動機になっている。

[新しい装置と実験からの学び] 「人は空間をどう読み取るのか」に関心を持った。大規模病院は機能が複雑で、病人が来て入口の案内板の20を越す室名から目的室を探し到達する大変さに気付き、試行錯誤し「小型カメラ付きの帽子を被った学生に目的室を探させ、画像分析から探索の仕方」を明らかにし、日本建築学会論文賞を受賞した。「新しい研究に新しい道具が必要」なことを学んだ。

[仮想現実空間の実験] 3m角の立法体スクリーンにCG画像を映した中で、立体視眼鏡で仮想現実病院空間が現れ、コントローラで自由に探索する装置を導入して高齢者実験を行い、高齢者に分り易い空間・サインを明らかにした。現実の建物を改造して効果を確認するのは大変だが、再現空間は容易に改造し効果確認が可能で、この装置で実験し結果を計画に反映させようと「新たな挑戦への学び」を続けている。

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わたなべ・あきひこ/1942年東京都生まれ。
「地域に開放し地域が支援する学校」等の海外を含む実態調査と学校建築の設計。いつでも・何でも学べる生涯学習のまちづくりの提唱と実践。3m立方体4面スクリーン空間に病院仮想現実空間の実現と高齢者実験結果を「分かり易い総合病院の計画」へ応用。静寂で刺激の無い特別養護老人ホーム生活に、絵画20点の展示・展示替えと音響効果等で街のような活気の形成を実現しています。

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