経済データを読み解けば、「通説」とは違う世界が見えてくる

羽森 茂之   神戸大学 経済学部
計量経済学 /研究領域:計量分析、実証分析、応用時系列分析 ]

経済の本を読むと、「日本経済はバブル崩壊後の失われた20年の中にあり、経済がうまく機能していない」という指摘がよく行われています。しかし、オイルショック、プラザ合意後の急激な円高等、日本経済は過去の難局を巧(たく)みに切り抜けてきました。こうした日本経済の適応力、民間企業の活力は、優れた日本経済のダイナミズムの証(あか)しと考えることもできます。しかしながら、バブル崩壊後の日本経済では、このような適応力がなぜ失われているのか?このような現状で震災後の日本経済は果たして大丈夫なのか?こういった問題を大学に入って学び、自分自身の頭で考えてみることは、これからの日本を背負って立たれる皆さんにとって、とても重要なことだと思います。

私は、学生に対して「通説を打破しなさい」とよく言います。多くの人々に正しいと信じられていること(通説)を疑ってみることは、ときとして極めて重要です。経済には、この通説と実体が違っていることがしばしばあります。経済データを詳細に検討し、通説の妥当性について自分で分析するところに計量分析の面白さがあります。また、学生には「ストーリー・テラーになりなさい」ともよく言っています。単に疑うだけではなく、自分で新しいストーリーを創り上げ、語っていく。その物語の言葉ひとつひとつの根拠となるのが“経済データ”であり、語るためのスキルが経済学、より専門的には、計量分析なのです。計量分析を行う人は、いわば小説家と同じような役割を社会に対して果たしていると言えるかもしれません。

大学の授業で計量分析の基本的なスキルを身につければ、自分で株価や為替相場(かわせそうば)の動きを予想したり、日本経済の成長率のゆくえを予想したり等々、幅広く応用することができます。パソコンの高性能化とインターネットの普及に伴い、計量分析は、いまでは誰にでも習得可能な研究分野となってきています。皆さんも、ぜひ、このような研究分野に興味を持って、積極的に社会の動きに関心を持ちながら、大学での勉強を行っていただければと期待しています。

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はもり・しげゆき/1959年京都府生まれ。
私が専門としているのは、現実社会の様々な経済問題を統計学的手法を用いて分析する研究分野です。私が経済学の分野を専攻することになったのは、社会における貧困問題等に関心を持ったことがきっかけでした。経済学を研究すれば、そのような問題に対する解決策を見つけることができるかもしれないと思ったからです。学部の学生時代には、まじめに授業に出るというよりは、たくさんの本を自分で読んでいたように記憶しています。あまりよい学生ではなかったかもしれませんね(笑)。ただ、アメリカの大学院に留学した時は、死ぬほど勉強しました。皆さんも、機会があれば、是非、留学されることをお勧めします。研究以外では、ボウリングやダイビングが趣味で、リラックスするようにしています。

被災された生徒・先生方へ

私も1995年1月17日に発生した阪神淡路大震災の時には、大変な状況に直面しました。幸いにも私を含めた家族は無事でしたが、神戸大学では、多くの学生や教職員の貴い命が奪われました。その時、自分の命が助かったことを幸せに思い、亡くなった多数の方々の分まで、自分がしっかりと頑張らなければならないと思った記憶があります。今回の震災で被災された皆様も、大変な状況に苦しんでおられることと思います。不幸にして命を落とされた方々の分まで、少しずつでも進んでいって頂きたいと心から願っております。

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