本当に必要なのは「想定外」に対応できる知~大学教育の役割

川口 昭彦   独立行政法人 大学評価・学位授与機構
大学評価方法開発 /研究領域:学習成果、大学評価の国際通用性、学位・職業資格の質保証 ]

このたびの東北地方太平洋沖地震により被災された方々に心からお見舞い申し上げます。被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。

東日本大震災と原子力発電所の事故は、日本の社会や経済のみならず、国の将来を担(にな)う人材を育てる大学教育も大きな転機となるでしょう。過去の大津波の経験から造られた防波堤防が破られ、大地震を想定して建設されたはずの原発は制御(せいぎょ)不能となり、私たちの生活に直接結びついたライフラインも途絶して、あちこちで「想定外」という言葉が聞かれました。私たちの身の回りで起こる自然現象は、ある程度予測でき、それに対する対策も講じられるようになっていたはずです。しかしながら、想定を超える事態は起こるのです。必要なものは、この「想定外」に対応するための知です。この知を培(つちか)うための大学教育はいかにあるべきでしょうか。

第一に、人文・社会科学から自然科学に至る多様な分野の知識に接することです。特に、それぞれの知識が確立されるまでの歴史(社会環境も含めて)を学ぶことが重要です。これらの歴史を知ることによって、未来を切り開く力を獲得することが可能となります。第二が、グローバルな感性を養うことです。地球上には多様な文化があり、異文化に接することによって異なった視点から事態を見直すことができます。第一は縦軸(歴史軸)、第二は横軸(地域軸)で、この両者から「想定外」を生き抜く知のヒントが期待できます。

大学教育の評価を行う際のキーワードは、「学習成果」です。学習成果は、「ある学習過程を終了した時に、獲得することが期待できる知識、技能そして能力」と定義できます。すなわち、「何を知っているか?」だけではなく、「何ができるようになるか?」という視点が重要なのです。「想定外」に対応できる体制の根幹にあるのは、一人ひとりの人間の力のつながりです。

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かわぐち・あきひこ/1942年台湾台北市生まれ。
東京大学名誉教授。東京大学時代の専門は生命科学でしたが、現在は、大学における教育研究の評価方法の開発研究をしています。特に、学習成果をいかに評価するかが最近の重要テーマとなっています。

被災された生徒・先生方へ

今まで誰も経験したことのない未曾有(みぞう)の大震災からの復興を世界が注目しています。これは新しい未知の領域への挑戦です。これからも長い苦しい戦いとなると思いますが、皆さんのご健闘を期待し、復興を祈念しております。皆さんの努力と経験は、世界中の人々へメッセージとなります。

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