教科はタテワリ、でも本当の現象はヨコツナガリ

宿谷 昌則   東京都市大学 環境情報学部 環境情報学科
自然のポテンシャルを活かす建築環境システム /研究領域:建築環境学(自然エクセルギー、熱力学、人間生物学) ]

私たち人は自然の振る舞いに対して謙虚でなくてはならない。深く学んだ知恵者が古くからそのように言い伝えてきました。言い伝えはしかし、時の経過とともに風化します。風化は、私たちの一人ひとりが本来備えておくべき想像力の貧しさがもたらすと言えましょう。想像力の貧しさは学問する心の貧しさに起因するように思えます。

今回の天災とそれに引き続く人災は、このことを露(あら)わにしました。学問する心を日頃から自ら鍛(きた)えておく――そのような能力を身につけることは、防災の心構えになり、また、復旧や復興の理念を確かにする礎(いしずえ)になるはずです。

学校で教えてくれることは限られています。また、短時間のうちに教え込む・・・という教える側の都合により、いろいろな事柄がタテワリの教科として教えられます。今回の天災と人災は、タテワリの学問は通用しないことを教えてくれたようにも思えます。自然の振る舞いも、また人やその集まりたる社会の振る舞いも、タテワリの仕切りに応じて起きてくれるなどということはありません。多くの現象がヨコツナガリで起きます。

私は、人にとって最も基本となる住まいの環境づくりに、身近な自然に存在する様々な恵み―太陽の光や熱、大気の温湿度変動、宇宙の冷たさなど―を活かす方法について研究と教育を行なってきました。この分野を建築環境学と呼びます。今回の天災と人災を通じて、建築環境学の重要性を確認することになりましたが、同時に旧来の建築環境学をより豊かな学問へと成長させていく必要性をも確認することになりました。

これからの時代を担(にな)っていく皆さんには、面白い・好きと思える学問分野を何か一つで良いですから見出す努力をしてほしいと思います。面白い・好きなことから出発して、自分なりに深く学びつつヨコツナギに学問を展開していく。そうすると学問する心は鍛えられ、また豊かになっていくでしょう。その心は、私たちが目指すべき人に優しい社会の共創に必ずや役立つはずです。

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本人写真

しゅくや・まさのり/1953年東京都生まれ。
“エネルギー問題”というときの“エネルギー”は実は「エクセルギー」というのが学問的には正確です。このエクセルギー概念に基づいて、私たち人にとって最も身近な環境空間―住まいの環境―を中心テーマとした研究と教育を行なっています。

被災された生徒・先生方へ

被災した方々の体験は、私の想像をはるかに超えるものだろう…そう思うと、なかなか言葉がうまく見つかりません。しかし、私なりに想像を巡(めぐ)らし、思いを寄せ続けること自体が重要だろうと考えています。被災した方々の辛い体験を決して無駄にしないよう、希望ある未来を見すえて、人に優しい環境づくりにかかわる学問と実践を改めて続けていきたいと思います。

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