環境の変化こそ、将来を考える機会~触発されたものを信じて

溝口 周二   横浜国立大学 経営学部 会計・情報学科
管理会計 /研究領域:原価会計、戦略会計、情報システムの原価管理 ]

私が大学受験の時は昭和44年(1969年)の、ちょうど東京大学が大学紛争のために受験が行われなかった唯一の年でした。ある意味で、今年の後期個別入試が行われなかった事態に似ているかもしれません。今は大学で何をどう学ぶか、将来の道筋を決めるために何をなすべきか等について様々な情報が飛び交っています。しかし、必然と考えられた環境(例えば入試)が激変した場合に、皆さんが考えていた計画や進路は根本から崩れてしまうかもしれません。

こうした環境変化は、これまで周囲に押し流されて熟慮しなかった自分の将来を真剣に考える機会を与えてくれます。私の場合には、ふんわりと大学は経済学部に出願しようと思っていたところ、当時の流行であったドラッカーの経営学に関する本を読み、これに触発されて経営学部に出願し、この中の一分野の会計学が生涯を通じて私の専門分野となりました。

経営学は経済学とは対象が異なり、実際の企業活動や組織の運動原理などを実践的に解明することを目的として、様々な社会科学をその領域に取り込んで発展してきました。近接学問領域としては経済学、歴史、心理学、コンピューター科学、数学などです。理工学部の教授と話をして、「経営学は工学に類似する側面がある。工学はマシンを動かし、経営学は組織や人を動かす」という言葉に納得したこともあります。

私の専門のきっかけは、経営学が扱う経営戦略や組織構造について、その裏付けとなる財務要因の分析が十分ではないと疑問に思ったことです。本来、組織や個人が計画を実行し、ある活動を行うためには必ず資源を消費し(例えば労働力、材料、エネルギーなど)、結果としてコストが発生しますが、そのコスト予測も重要になります。こうした経営のための会計が組織構造と調和し、うまく機能してきたことが日本経済の発展につながり、高品質で適正価格の日本製品というブランドが構築されてきたのです。管理会計は、さらにグローバル化した日本企業による新しい戦略策定と経営管理に役立つ理論と実践を研究しています。

さて、「時と機会は誰にも臨むが、人はその時を知らない」という言葉があります。振り返ると、高校生であった自分は、管理会計を専門とする研究者になろうとは夢にも思っていませんでした。大学への進路選択という短期的な視点に立っていては、機会を捉えて、柔軟な進路決定をすることがその時には難しく、後になってあの時が決断の時だったと気付いたわけです。ただ、その時々の環境変化に対応して、時に適(かな)い、機会をとらえる知識を多少ながら持っていたことが今の専門分野に至る入り口だったと今にして感じています。中高校生の皆さんにとって不要な学習は有りません。真摯(しんし)に学びに取り組むことで豊かな将来が開けていくと確信しています。

先生への感想・質問がある場合はこちら
※◎を@に変更してメールをお送りください。
shujim◎ynu.ac.jp

本人写真

みぞぐち・しゅうじ/1949年東京都生まれ。
会計は地味な学問に見えるかもしれませんが、私たちの生活に直結し、社会や生活に大きな影響を与えています。例えば、政府予算は国家の活動を、家計簿は皆さんの家庭の消費生活をお金という物差しで測定して、より良い将来の指針を作成するのに役立ちます。

本サイトは、経済産業省のキャリア教育事業の一環で作成した「わくわくキャッチ!」の独自コーナーとして、河合塾が作成し、運営しています。
Copyright(c)2011 Wakuwaku-catch.All Rights Reserved.
河合塾河合塾