自分で調べる力を!~マスコミは一面しか伝えない

島本 美保子   法政大学 社会学部
環境経済学 /研究領域:持続可能な森林管理、環境と貿易 ]

私は小学生の頃、運動神経が鈍く太っちょで、典型的ないじめられっ子でした。そんな私が心癒(いや)されたのは、祖父母の住む田舎のあふれんばかりの自然でした。私は中学生になったある日、抜群に勉強ができればいじめられない、ということに気が付き、それからガリ勉して有名大学に入りました。始めはいじめから脱却するための勉強でしたが、高校時代になると私の心の故郷である自然が世界的に破壊されつつあることを知り、なんとかしなければ、と思うようになりました。

大学時代、熱帯林の破壊を告発する環境NGOの活動をみて、私もぜひ何かしたい、と思いましたが、「ちょっと待てよ。熱帯林の破壊を食い止めるための有効な手段は、何かまだよくわかっていない、わからないのに活動できない」と思ったのでした。それならちゃんと熱帯林破壊の原因や破壊しない方法を研究する方が先ではないか、と思い至り研究者を志しました。

私が専門とする森林問題もそうですが、世の中で解決されていない問題は、原因や解決法がそんなに簡単にわからない問題です。例えば森林問題について、かつて「森林破壊を食い止めるに、わりばしを使わないようにしよう!」という運動がありましたが、実際はわりばしを使うことが森林破壊になっている場合と森林保全になっている場合があります。

またマスコミなどで取り上げられる情報は物事の一面しか伝えていない事も多いです。福島原発の事故で人々は原子力発電の危険性を目の当たりにしましたが、以前から原子力発電の危険性に警鐘を鳴らしていた人は結構います。しかし政府や電力会社は原子力が安全だ、という情報を流しつづけたので、自分で関心をもって調べようとした人にしか、その警鐘は届かなかったのです。

皆さんが将来どんな職業に就くとしても、物事についての正確な知識を得たり問題解決したりする事はとても重要です。そのためには与えられた情報に満足せず、自分の力で学ぶ事が大切です。

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しまもと・みほこ/1965年京都府生まれ。
環境、特に世界の森林破壊が現在の経済システム、特に貿易システムとどのような関係にあるのかを解明し、森林資源と生物多様性を守るにはどのような経済政策をとったらよいか、を研究しています。

被災された生徒・先生方へ

大切な人を失ったり、生活することが大変になったりして、学ぶどころではない状況だと思います。あせらず、ゆっくりと、少しずつ前を向いていかれるよう、そしてやがてまた楽しく学べるようになられることを願っています。

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