震災被災地の方々には、心からお見舞い申し上げます。
今年の1月にインドで、食料の値段が高くなったことに反対する大きな暴動が起こりました。我々日本人には、食料の値段が上がったくらいでどうして暴動になるのか、分かりにくいのですが、その訳が分かるのには、開発途上国の、とくに貧しい人々の生活について知る必要があります。
わずかでも土地を持って耕している農家の人はまだよいのですが、大半の貧しい人々は、不安定な1日単位で雇(やと)われる労働者です。1日働いても数百円の収入にしかなりません。食べ物を買うのに、そのお金を全部使っても、まだ足りず、家族はいつも空腹で栄養不足です。このような人々が、世界では8億人もいます。この状態で食物の値段が上がると、生きていく最低の限界で生活していた人々は、買える量が減って、飢え死に状態に追い込まれます。それで食料の値段が上がるのに反対して暴動が起こるのです。
どうしたらよいのでしょうか。第一に、途上国自身で食料をもっとたくさん作れるようにすることです。食料の量が沢山あれば、安い食料が買えるようになります。では食料を増産するには、どうすればよいでしょうか。
みなさんは「かんがい(潅漑)」という言葉を知っていますか。大きな川やダムから、水路で導いて、畑の作物に水を掛けることです。世界中には雨が少なくて作物が十分に育たないところ(乾燥地域)が多いので、世界全体で見ると、この「かんがい」が、食料増産にもっとも直接的に効果があって、「かんがい」をした農地では、してない農地の4倍の収穫があります。
でも、世界の国々では、水資源が不足して「かんがい」がなかなか増やせません。私はずっと、少ない水を有効に使ってなるべく多くの「かんがい」をするための研究をしています。みなさんも、将来、このような研究に参加して、世界の多くのかわいそうな人々を助けるのに貢献して下さるとよいと思っています。