かんがい技術は8億人を飢餓から救う~世界に目を向けて

中村 良太   中村・水と農研究所 代表
農学、生命科学 /研究領域:地域環境工学、水利環境工学 ]

震災被災地の方々には、心からお見舞い申し上げます。

今年の1月にインドで、食料の値段が高くなったことに反対する大きな暴動が起こりました。我々日本人には、食料の値段が上がったくらいでどうして暴動になるのか、分かりにくいのですが、その訳が分かるのには、開発途上国の、とくに貧しい人々の生活について知る必要があります。

わずかでも土地を持って耕している農家の人はまだよいのですが、大半の貧しい人々は、不安定な1日単位で雇(やと)われる労働者です。1日働いても数百円の収入にしかなりません。食べ物を買うのに、そのお金を全部使っても、まだ足りず、家族はいつも空腹で栄養不足です。このような人々が、世界では8億人もいます。この状態で食物の値段が上がると、生きていく最低の限界で生活していた人々は、買える量が減って、飢え死に状態に追い込まれます。それで食料の値段が上がるのに反対して暴動が起こるのです。

どうしたらよいのでしょうか。第一に、途上国自身で食料をもっとたくさん作れるようにすることです。食料の量が沢山あれば、安い食料が買えるようになります。では食料を増産するには、どうすればよいでしょうか。

みなさんは「かんがい(潅漑)」という言葉を知っていますか。大きな川やダムから、水路で導いて、畑の作物に水を掛けることです。世界中には雨が少なくて作物が十分に育たないところ(乾燥地域)が多いので、世界全体で見ると、この「かんがい」が、食料増産にもっとも直接的に効果があって、「かんがい」をした農地では、してない農地の4倍の収穫があります。

でも、世界の国々では、水資源が不足して「かんがい」がなかなか増やせません。私はずっと、少ない水を有効に使ってなるべく多くの「かんがい」をするための研究をしています。みなさんも、将来、このような研究に参加して、世界の多くのかわいそうな人々を助けるのに貢献して下さるとよいと思っています。

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なかむら・りょうた/1937年神奈川県生まれ。
長年、東京大学・日本大学で教授として、農業に用いる水について研究してきました。他の国の人々とも協力して、先進国の水を効率的に使う技術を、途上国に伝えようと、いろいろな国を旅しました。

被災された生徒・先生方へ

昔の外国の偉い哲学者がこう言いました。「フランス革命のすさまじい混乱と破壊、その後に残ったのは、人々の『進歩』だった」と。どうか頑張って下さい。

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