「交通」は経済学でも勉強できる。工学とは限らない!

正司 健一   神戸大学 経営学部
交通政策 /研究領域:公共交通、交通まちづくり、社会基盤整備 ]

私が今の専門分野に出会ったのは40年以上前、ちょうど中学生から高校生になる頃のことになります。当時、国鉄の赤字問題、交通事故、道路渋滞、公害、都市問題といった問題が大きく取り上げられていました。そのなかで、なぜこんなに便利な路面電車が自動車交通にとって邪魔(じゃま)な存在として扱われ、赤字だからと廃止されるのだろう、都市交通問題の救世主と言われ開発されている「新交通システム」はそんなに良いシステムなのだろうか、といったような疑問を抱き、当時次々と出版されはじめていた書籍に手を出していました。B.Richards,『新しい都市交通』(1968年)、都市交通講座『1 都市と交通』(1970年)・『2 交通と経済』(1970年)、そして Meyer, Kain, Wohl (井上孝訳)『都市交通分析』(1970年)等々。これらの本が交通研究者としての私にとっての原点であり、いまも研究室にあります。

もちろん、中学・高校生の段階で、その内容を理解できていたとは思いません。ただ、このような本を読み(ながめ)、友人と議論する中で、工学ではなく経済系のアプローチで交通について勉強したいと考え、私は神戸大学経営学部で学ぶことを選びました。技術優先主義に対する反抗心が、その選択の背景にあったのかもしれません。

そんな私のゼミに来る学生たちですが、みんなが交通政策の担当者になるわけでも、交通系企業に就職するわけでもありません。むしろそのような進路を選ぶ者はごく一部です。多くの人にとって大学は最後の学習の場であり、卒業後は社会人として独(ひと)り立ちしていくことになります。社会人となれば、何が本当の問題なのかを自ら把握(はあく)し、その解決方法を考え、その提案を納得してもらうことができる能力を身につけることが必要です。そのためには自分のアイデアをきちんと提示できる力、人の意見,異なるアイデアをきちんと聴ける力、議論から何が真理かを見抜く力を磨かねばなりません。このためのトレーニングを、交通という身近な問題を題材にして行っているのが私の分野ということができます。

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しょうじ・けんいち/1955年兵庫県生まれ。
物理的構造物はほとんど壊されたけれど、人と人との「縁」はつながっている。神戸の時に実感した、数少ない希望の持てる事実でした。このつながりを支える、人々の生活、社会経済活動にとって不可欠な存在である交通を研究対象としています。なお2年前から、副学長として大学運営にも携わっています。

被災された生徒・先生方へ

あの日から16年たって、この同じ日本という国で、私たちが経験した以上の災害を、このように広範囲の人たちが経験することになったことに、大きな衝撃を受けています。当事者にしかわからないこと、たくさんあると思います。ただ、あの神戸のまちも、いまは域外から来られた方にすっかり復興しましたね、と言われるまでになりました(われわれの目からは少し違うので、面(おも)はゆいところはありますが)。一歩一歩、歩んでいけば、結果はおのずとついてくる。学生たちにはいつもそのことを伝えることにしています。目指す方向を大きく考えながら歩めば、さらに良いとも。

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