アルバイトができるのは誰のおかげ?~インフラ維持はなぜ重要か~

西垣 正勝   静岡大学 情報学部 情報科学科
情報セキュリティ /研究領域:ユーザ認証、不正プログラム検知、ヒューマニクスセキュリティ ]

今回の震災によって、被災地では電気・ガス・水道・通信・輸送といったすべてのライフラインが壊れました。特に電気においては、誘発された原発事故によって長期的な電力不足が懸念(けねん)されています。この度の大地震は、今まで当たり前だと思っていた便利な生活は、誰かがどこかで社会のインフラ(社会生活を支える基盤施設・設備・システム)を適切に運用管理してくれていたからこそ成り立っていたのだということを改めて気付かせてくれました。インフラとは、自然発生的に供給されるものではなく、皆で努めて維持していくものなのです。

最近は「一生、フリーターでかまわない」という人が多くなってきたと言われています。確かにコンビニのアルバイトは、コンビニの店長と比べると気楽だと思います。アルバイトは、来店するお客が多くても少なくても時給は変わりません。このため、客数が少ないほどお客様対応が減って、楽にお金が稼(かせ)げます。一方、店長の立場になると、売り上げが上がらないとお店が倒産してしまいますので、いかにして客数を増やすかが命題となります。自分の店を経営するということは、それこそ死に物狂いの努力が必要となります。

誰でも楽にお金が稼げたほうが嬉しいと思います。しかし、だからと言って、全員がアルバイトになってしまったら、コンビニを経営する人が誰もいなくなってしまいます。コンビニがなければ、アルバイトをしようと思っても働く場所がありません。全国の店長の皆さんが苦労して努力してコンビニ経営というインフラ作りをしてくれているからこそ、従業員の皆さんがそのインフラの恩恵を享受(きょうじゅ)して、アルバイトで生計を立てて生活していかれるのです。

上述のとおり、今回の大地震は社会インフラの大切さを改めて我々に教えてくれました。我々は一人ひとりが最大限の努力をして社会のインフラを維持していく義務を負っているのだと思います。これからの日本や世界を担(にな)う皆さんは、ぜひ、社会におけるコンビニの店長さんや会社の社長さんの大切さを理解した上で、自分の将来の目標を掲げ、それに向かって努力していって欲しいと切望しています。今、皆さんが勉強をする意味は、まさにそこにあるのだと信じます。

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にしがき・まさかつ/1967年岐阜県生まれ。
情報社会の安心・安全を守るための情報セキュリティ技術について研究しています。今回の寄稿では、自分達の生活を守るもの・支えるものが崩壊したときの怖さを記し、社会インフラの維持に対する私達自身の責任と義務について書きました。ネットワーク社会における私達の生活を守るための情報セキュリティ技術の研究は、私なりの社会インフラ維持に対する担務だと考えています。

被災された生徒・先生方へ

被災された皆様におかれましては、心からお見舞い申し上げます。私は私なりに今まで苦労を経験してまいりましたが、今になって振り返ると、そのすべてが自分の成長の糧(かて)になっていたのだということを身に染みて感じております。苦労の大きさは、それに比例した大きさの自分の成長となって自分に返ってきます。今回の皆様の辛苦は、私が経験してきた苦労とは比べ物にならないほど大きなものであられますが、だからこそ、皆様はこの震災を通じて、大きな成長をなされるのだと信じてやみません。一日も早い復興を強くお祈りしております。

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