震災という変化の体験からこそ、新しい歴史学が生まれる

渡邉 昭夫   東京大学 名誉教授
国際政治学、日本外交論

いまなぜ学ぶのか? という問いにはいまだからこそ、と答えたい。

私自身が、歴史学と政治学を志したのは、13歳の頃に経験した日本の敗戦と、その結果としての社会の大変動が動機となった。自分では今度のような自然の災害には遭(あ)ったことはないが、比喩(ひゆ)的に言えば、それまで不動と思われていた一つの社会秩序が根底から揺らぐという意味では、敗戦は大地震が与えた衝撃に比べることができる。300年余続いた幕藩体制が瓦解(がかい)するのを経験した、祖父たちの世代も似た経験をしたはずである。その一人である福沢諭吉は、幕府崩壊の最後の戦いの銃声が江戸の近傍で聞こえている最中に、それをものともせず、若い学生たち相手の授業を続けたというエピソードがある。

世の中には不変不動のものはないという痛切な体験は、世の変化についての学問である歴史への関心を呼び起こすはずである。いまの大震災を経験した若い世代のなかから、新しい歴史学が生まれることを信じている。

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わたなべ・あきお/1932年生まれ。
東京大学文学部国史学科卒。東京大学、青山学院大学などで国際政治学を教え、定年退職後は、平和・安全保障研究所理事長、そして副会長を歴任。

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