2011年3月11日に生じた東日本大震災・大津波と原発事故は、歴史の転換点になる大きなできごとです。学問の世界でも、これまでの研究のあり方を見直し、社会の再生に向けた取り組みをする必要が生じています。地震予知、新エネルギー開発を始めとする自然科学の分野だけでなく、社会科学の分野でも、同じことがいえます。被災地の復旧・復興に必要な地域社会の枠組み、教育のあり方、行政の仕組み等々、考えるべき課題はたくさんあります。それらは、被災地に限らず、あらゆる地域や国で必要になる課題につながっています。
すでに、社会科学系のいくつかの学会では、これまでの学問のあり方を問い直し、改めて社会の再生に貢献しうる研究活動を行うために、学会や会長の声明を出したり、集団的な取り組みを模索したりする動きが始まっています。私が参加している社会学系の学会でも、5月に開催された大会で震災に関わる研究活動をめぐって臨時のラウンドテーブルが開催されました。2日目のプログラムが始まる前の時間に急遽(きゅうきょ)設定されたにもかかわらず、数多くの研究者が出席しました。多くの研究者が、「3.11」後の研究のあり方を自らの問題として積極的にとらえようとしていることの表れです。私も自らが専門とする社会学・教育社会学の蓄積をベースに、新たな視点から社会の再生に求められる研究を推進し、その成果を教育にも反映させていこうと考えています。
このような時期に皆さんは、大学へ入学され、学問の世界にふれることになります。大学に入学されたら、学問の社会的意義や社会的使命を感じながら、自らの将来の生き方とそれを支える力を獲得していってください。これらのことを通じて、皆さんが社会の再生と社会の未来を切り開く大切な担(にな)い手になっていくことを期待しています。